274.5 お友達に相談
「ちづるちゃん!しょうぶですわ!」
いつものように、意気揚々と教室に入ってくるツインテールの女の子。千鶴の友人である、百瀬レナのその手には本があり、既に見慣れた光景なので誰も何も言わないで微笑ましくそれを見ていた。
いつも決まった時間に本を持って別クラスからやってきて、千鶴と2人で仲良く本を読む。姉妹のようにも見えるのだが、そんなことは当人達は気にしておらず、現にレナは気づいてなかった。
「あ、れなちゃん。あのね、きょうはごほんすこしまって」
「ど、どうしたのかしら?わたくしとのしょうぶがこわくなったの?」
いつもならノリノリな千鶴がそんなことを言うのでアワアワしだすレナ。そんなレナに千鶴は首を横に振って言った。
「あのね、おにいちゃんのたんじょうびぷれぜんとかんがえてるの」
「たんじょうびぷれぜんと?」
「うん。もうすぐなの」
瑠美にアドバイスは貰っても納得のいくものが出来ずにいるのだ。そんな千鶴の様子にレナは自信満々に言った。
「わたくしはきのう、おねえさまにたんじょうびぷれぜんとわたしましたわ!」
「え、れなちゃん、すごい!」
「そ、そんなことなくはないですわ」
素直に褒められて照れるレナ。そんなレナに千鶴は聞いた。
「ちなみになにをあげたの?」
「ふふん。うたですわ!」
「うた?おうたあげたの?」
「ええ、おねえさますごくよろこんでくれましたわ」
「むむむ・・・」
新しい案に悩む千鶴。そういえば、文化祭での健斗のバンド凄かったなぁと思ってから、千鶴は言った。
「おうたは、れなちゃんのほうがじょうずだからむり。でも、れなちゃんのおかけでわかったかも。ありがとう」
「ふ、ふん!とうぜんですわ。わたくしとちづるちゃんはらいばるであり、おともだちなんですから」
「うん。ありがとう」
「それより、さっそくしょうぶですわ!きょうこそかってみせますわ!」
そう言いながら千鶴の膝の上に座ってから本を開くレナ。少し重たいが、なんとなくお姉さん気分で嬉しくなり、あとついでに相談に乗ってくれた友達へのお礼をかねて一緒に本を読む。
最近はひらがなの本を読むことが増えてきて、自然と2人とも文字を覚え初めているのだが、そんな天才的な片鱗を間接的に教えているのは健斗だという事実はこの際スルーでいいだろう。
千鶴の求めるままに教えている健斗なのだが、千鶴とレナの吸収力の速さが尋常ではないというのも確かな事実。
まあ、とにかく、そんな感じでお悩みをすっきりさせた千鶴は健斗が迎えに来るまで2人で本を読むのだった。




