268 手を繋ぎたい
おてて・・・
「うわー・・・人多いですねぇ」
流石に休日の、しかも日曜日ということもあって辺りは活気に満ちていた。少し遠出してきたのは大きなショッピングモールのある観光地にほど近い場所なのだが、距離的に学生が来ることはあまりないので丁度いいのだろう。
「まあ、休日だしな」
「ですねぇ。でも、色々あって楽しそうですし、今度は千鶴ちゃんも連れて来ますか」
その言葉に先生は少しだけ考えてから、突然俺の腕に抱きついてきた。って、ちょ!?
「あ、あの・・・遥香さん?」
「はぐれたら困るだろ?」
い、いや、それにしても腕に当たる柔らかい感触が・・・も、もしかしてわざとやってるのかな?これは仮にもデートだし娘とはいえ千鶴ちゃんの名前を出したのはまずかったのかな?
「さ、行くぞ」
そう言われて抱きつかれたまま歩くが・・・う、うーん・・・腕に当たる柔らかい感触がどうしても気になる。
「あ、あの・・・せめて手を繋ぐ方に変えませんか?」
「嬉しくないのか?」
「いえ、本音を言えば物凄く嬉しいですが、理性的にはアウトになりそうなので」
そう言うとキョトンとしてからくすりと笑う先生。
「素直だな。まあ、いいか」
そう言ってから俺の腕から手を離すと、今度は俺の手を繋ぐ先生。でも、繋ぎ方がなんというか・・・指と指を絡ませる所謂恋人繋ぎなのがどうしても気になる。
というか、よく考えたらこれ初めて女の子と手を繋いだのかな?千鶴ちゃんとはよく帰りに手を繋いだりしてるけど、先生とこうして2人きりで手を繋ぐのはなかなかないので新鮮な気持ちになる。
「ま、折角だ。ゆっくり回るか」
「ですね。あ、手汗とか大丈夫ですか?」
「ん?緊張してるのか?」
そりゃ、まあ・・・好きな人と手を繋ぐのは緊張するよね。普段はあんまり気にしないけど、こういう状況だとどうしてもねぇ。
「まあ、私も少しは緊張してるがな」
「そうなんですか?」
「必死に抑えているがな」
なんだろう、今の抑えてるは緊張の話のはずなのに別のニュアンスにも聞こえたような・・・気のせいかな?
「なあ、こうして手を繋ぐと普通にカップルにも見えるかもな。まあ、私がそういう年齢に見えるかはわからないが」
「大丈夫ですよ。遥香さんはいつでも可愛いですから」
「・・・そう言ってくれるのはお前くらいだよ」
まあ、事実だし。普通に私服の先生は大人っぽいけど、特に大丈夫だろうと思いそう言うと嬉しそうに手を強く握ってくる先生。可愛い反応を楽しみながら手を繋いで楽しみ始めるのだった。




