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29 お酒の勢い

お酒はほどほどに



「こうして誰かと飲むのは久しぶりだ」


ビールを飲みながら先生はそう呟く。


「そうなんですか?誰かと飲みに行ったりは?」

「ちーちゃんが産まれてからは基本的にほとんど断ってるさ。それに元々大勢で飲むのは好きじゃないからな」

「遥香さんらしいですね」


なんなく俺のイメージ通りなので思わずそう笑うと先生は一気にビールを飲み干してから少しだけ赤くなった顔で言った。


「なぁ・・・健斗。私はダメな大人だよな」

「どうしたんですか、唐突に」

「家事も子守りも出来ない、仕事しかできないダメな母親だ・・・そんな私をちーちゃんは母親として慕ってくれているんだ」


はぁと、ため息をつく先生。酔いが回ってきたのだろうか?いつもの先生らしくない弱気な言葉とその表情に俺は思わず抱き締めたい衝動にかられるが、なんとかおさえて代わりに別の言葉をかけた。


「遥香さんは頑張ってますよ。千鶴ちゃんがあんなにしっかり育ったのも遥香さんの教育の賜物でしょう」

「どうだか・・・」


先生はそう言ってビールを飲もうとするが、グラスが空なのに気づいて口を尖らせる。俺はそれに苦笑しながらビールを注ぐ。


「おう、サンキュー。にしてもやけにビールの注ぎ方上手いな」

「そうですか?まあ、昔は父さんの晩酌に付き合ってましたからね」

「父親・・・そういや、早めにお前の親にも挨拶行かなきゃな」

「そのうちでいいですよ。遥香さんもお仕事忙しいんですから」

「忙しいのはお前の親もだろ?確か夜の仕事してるとか聞いたが」

「ええ、オカマバーみたいなところで働いてます」


その言葉に先生は俺を見てから頷いて言った。


「なるほど、納得だ」

「何故俺の顔を見て納得したのかは聞かないでおきます」

「なんだ?童顔なの気にしてるのか?」


聞かなかったのに答えを言う先生はかなり意地悪だと思ったので俺はため息混じりに答えた。


「童顔なのは気にしませんよ。わりと母親似なのでそこは全く問題ありませんが、父親の仕事を知った人が俺を見て結びつけるのがあまりいい気がしないだけです」

「なんだ?親の仕事に否定的なのか?」

「逆です。親の仕事を馬鹿にされてる気がして嫌なんです。俺は仕事にプライド持ってる人が好きですから」


安易に女装趣味=オカマみたいなイメージが好きではないだけだ。どんな仕事であれそれに喜びやプライドを持っているなら簡単にジャンル分けをするのは良くないと思うのだ。

そんな俺の言葉に先生はしばらく黙ってからぼそりと言った。


「気味が悪いくらいに私好みの性格だな・・・」

「お互い様です。俺も遥香さんと相性良すぎてビックリしてますから」

「なら、私達はお似合いってわけだ」


にっこりと笑う先生に俺は少しだけ顔が赤くなるのがわかった。そういえば先生のこんなに無垢な表情見るのははじめだ。お酒のせいだろうか?それでもこんなことがあるなら晩酌に付き合うのも悪くないと、そう思うのだった。






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