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267 好きな人と一緒なら

一緒なら

「んじゃ、行くか」


当たり前のように車の鍵を持って出ていく先生の姿にちょっと申し訳なくなる。近場では知り合いに見られるかもしれないし、少し遠出する必要があるから、車という移動手段が最も安全なのだが・・・それでも、毎度折角の休みに運転を任せるのはどうしても気が引けるのだ。


まあ、楽しんでるみたいだし気にしない方がいいのかもだけど。そんなことを思いながら駐車場に行って車に乗ると、先生は苦笑気味に言った。


「悪いな。初デートの夢壊して」

「どうしたんですか急に?」

「朝少し聞こえてな。考えてみたらお前も人並みにそういう経験したかったんじゃないかと思ってな」


朝というと、瑠美さんとの会話だろうか?


「私も和也とはあんまりデートはしなかったからな。だからとは言わないが、お前に学生らしいデートをさせてやれないのが申し訳なくてな」

「んー・・・すみません。実はあんまり気にしてませんでした。そもそも俺は好きな人と一緒にいられるならそれだけで幸せなので」


確かに待ち合わせして、近場を巡ったり、所謂お家デートなんてものも興味がなくはないが、もう既に同棲してる上に可愛い娘までいるなんてむしろ幸運としか言いようがないと思うのだ。


「でも、遥香さんとこうして2人で出掛けられるのは嬉しいです」

「・・・お前らしいな」


くすりと笑ってからエンジンをかける先生。


「だが、確かにな。私もお前とちーちゃんといる時間が1番幸せだ。それでも、こうしてお前を一時とはいえ独占出来るのは本当に嬉しい」

「それなら、良かったです」

「娘の前で見せられない姿もあるからな」


そう言いながら俺の肩に頭を乗せて甘えてくる先生。いつもより早くに甘えてくるので少しだけびっくりしながら先生の頭を優しく撫でながら言った。


「出掛けるんじゃなかったんですか?」

「その前に少しくらい時間を無駄にしてもいいだろ?」

「まあ、構いませんが」


本当に甘えてくる姿が親子でそっくりなので思わず微笑んでしまう。特に最近の先生は前よりも俺に甘えてくる回数が増えているので尚更そう思ってしまう。


まあ、時間にしては短くともそれなりに濃い時間を過ごしてるからだろうか?文化祭も終わったことだしあとは先生の誕生日と卒業式を待つだけ・・・まあ、その前に無事に卒業しないとだけど。


とりあえず成績的にも、出席日数的にも留年なんて有り得ないとは思うが、油断はしないで二学期の期末テストを乗り切らないとね。そう思いながら、しばらく甘えてくる先生を愛でるのだった。



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