263 まさかの展開
続投
ーーーそう、終わったんだ。友人達とのライブは。
「あの、先生。何故俺は教師陣のバンドに入らされてるんでしょう?」
ライブが終わっても、何故かステージに立っている俺。先生から借りたギターを持ったまま、隣で今度はベースを持っている先生とステージに立っているという謎の現象。
「言ったろ?人が足りないって。お前なら穴埋め出来るだろうから任せたんだ」
「ごめんなさいね、巽くん」
数学の竹中先生が申し訳なさそうにする中で、堂々としてる先生に俺は言った。
「ぶっつけ本番でやれるほど、才能ないんですが・・・というか、穴埋めに生徒使っていいんですか?」
「仕方ないだろ。それに、さっきあれだけ熱烈なラブソング歌ってたんだ。お前なら出来るさ」
どことなく嬉しそうな先生。さっきのメッセージはちゃんと伝わっていたようだが・・・しかし、まさかこうして先生とバンドを組むことになるとは正直全く思ってなかった。
「楽譜は覚えたな?」
「そんなすぐには無理ですってば。まあ、ミスっても良ければギリ弾けなくもないですが」
幸いそこまで難しい曲じゃないから、やろうと思えば出来るかな?まあでも、こんな時、雅人なら余裕でやりきるのだろうけど・・・生憎とそこまで器用じゃないからなぁ。
「安心しろ。私もベースは初めてだからな」
そう言いつつも既にベースが馴染んでる先生は本当に器用だと思う。
そう、本当なら俺のギター&ボーカルポジションに先生がいたそうだが、本来ベースの英語の田辺先生が本日は休みのために急遽穴埋めに入れられたのだ。
何故俺なのか?まあ、多分単純に先生の我儘も少しだけありそうだと思った。折角の文化祭の舞台で、一緒に演奏したいという小さな我儘。あと、多分自分の生徒で1番使いやすいからだろう。
「まあ、とにかく、折角の機会だ。失敗してもいいから楽しんでくれ」
「・・・わかりましたよ」
どのみち、もう引き返せる段階は過ぎてるし、ステージに立ってしまった以上は役目を果たそう。キラキラした瞳を向けてくる千鶴ちゃんにカッコ悪い姿を見せたくはないし、演奏終わって女の子に囲まれてから、一段落した雅人と斉藤がニヤニヤしながらこちらを見ているのも気になるしね。
それに・・・どうせなら、先生とのバンドが出来るこの奇跡を大切にしたしいね。
「んじゃ、いくぞ巽」
「はい。先生」
そうして、俺は教師陣のバンドに臨時ボーカル&ギターとして混じって先生と演奏するのだった。言わずもがな、先生はベース初めてといいつつ完璧に演奏していたので、流石だが、俺は多少ミスりつつも先生とのバンドを楽しむことが出来たのだった。




