28 大人の時間
大人の時間(意味深)ではないです(^_^;)
「ん、まだ残ってたのか」
夕食を終えてから二人がお風呂に入り、千鶴ちゃんを寝かしつけてから先生がまだ居間にいる俺をみてそう聞いてきた。いつもなら先生が千鶴ちゃんを寝かしつける頃には帰宅しているが、本日は針仕事があったので残っていたのだ。
「千鶴ちゃん寝たんですか?」
「ああ、ぐっすりな。何してるんだ?」
「先生と千鶴ちゃんの服を縫ってるんです」
正確には取れかけのボタンと破れてるところをパッチをあてて修復しているだけだ。まあ、服も作れないことはないけど、ミシンは持ってないのでやるなら学校で作るしかないだろうし、出来たとしても簡単なものしか作れないだろう。
「お前は本当に多芸だな・・・その器用さを少しは勉強にも向けたらどうだ?というか、お前勉強は大丈夫か?」
「問題ありません。元々家ではあまり勉強しませんから。授業の内容とテスト前の一夜漬けでなんとかなります」
「教師としてはもう少し勉強にも力をいれてほしいが・・・まあ、今の私にそれを指摘する資格はないからスルーしてやる」
「まあ、将来の就職先で修行してるので問題ないでしょう」
「将来の就職か・・・なあ、健斗。お前は私のこと好きか?」
いきなりそんなことを聞いてくる先生。俺は特に悩まずに素直な気持ちを答えた。
「はい。もちろん好きですよ」
「じゃあ、ちーちゃんと私だとどっちが好きだ?」
「そんなの比べるジャンルが違いますから答えられませんよ。千鶴ちゃんへの好きは家族としての好意です。先生への好きは異性としての好意ですから」
「お前は私を異性として意識しているのか?」
「ええ。もちろん」
今更なことを聞かれて俺は首を傾げるが先生はその答えにしばらく黙ってから笑って答えた。
「そうか・・・なら、今日はもう家事はやめて私に付き合え」
「付き合えって、何をですか?」
「決まってるだろ、大人の時間さ」
大人の時間?え?もしかして大人の階段登るみないな・・・そうか俺もついに一人の男へと成長する・・・
「晩酌に決まってるだろ?」
「ですよね。わかってました」
うん、少しも残念とは思ってないよ。わかっていたよこういう展開なのは。千鶴ちゃんに父親認定されるまではプラトニックな付き合いなのはわかってさ。
「でも、俺飲めませんよ?」
「ジュースでもお茶でもいいから私に付き合え。たまには誰かと一緒に飲みたいんだよ」
「そうゆうことなら是非に。おつまみ出しますね」
「ああ」
そうして俺は先生のビールと俺のジュース、そしておつまみを取りにいくのだった。