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258 文化祭1日目

初日の大仕事

「お帰りなさいませぇ、ご主人様♪」


文化祭1日目、我がクラスの精鋭の美少女(一般基準)がメイド服で満面の笑みを浮かべる中で、何故か1人だけ女装して紛れ込んでいる人物がいた。


まあ、俺なんだけど。


「お帰りなさいませご主人様♪」

「お、君可愛いねぇ。一緒に写真どうかな?」

「お帰りはあちらになります♪」


そして、俺は何故かナンパホイホイのターゲットになってた。来る客のほとんどが今のところ下心丸出しで俺に声をかけてくるのでそうして来てすぐにご退場頂いている。


しかし、誰も俺が男だと気づかないのどうなんだろう。さっきは1度お尻を撫でられたし、女子のメイク技術は本当におそろしい。


「お、やってるな」

「あ、先生」


そうして厄介な客を俺が引き寄せていると、丁度空いてきたタイミングで先生が顔を出した。クラスの出し物にはあまり口出しはせずにわりと緩く見守ってくれているから、皆もこうして自由に出来ているのだろう。


「ん、その声、もしかして巽か?」

「もしかしなくても巽です」

「ふふーん!女子一同で頑張ったんだよ」

「ほう、そうなのか」


クラスメイトの女子のその言葉に頷きながら俺をジロジロ見てくる先生。その視線に少し居心地が悪くなって来た頃に先生は頷いて言った。


「うん、よく似合ってるな。なんだったら、本職にしてもいいくらい似合ってるぞ」

「先生、冗談でも笑えません・・・」

「そんで、今のところは人気みたいだが、女子は変な輩に絡まれたらすぐにヘルプ呼ぶこと。クレーマーも遠慮なくな。客の声に全て答えるのが接客じゃないってこと覚えておけ」

「「「はーい」」」

「まあ、ブラックなところなら通用しないがな」


その言葉にくすりと笑う何人かの就活希望生徒。こうして、皆の前で先生をやっている姿は本当にイキイキしていて好きだけど、ちょっとだけ、俺の中の小さな嫉妬も顔を出す。


「あと、男子はこの機会に可愛い女子にオイタをしないことな。合意なら多少見逃すが」

「女装男子は?」

「それは・・・」


チラリと俺を見てきてその瞳に一瞬だけ影がさすのがわかった。というか・・・誰だ今その質問したのは!?


「別にそういう趣味は否定しないが、現状日本では同性愛は難しいから目覚めるなら覚悟しとくべきだな」

「「「はーい」」」

「いや、返事するなよ!」


思わずツッコ厶と笑いがおこる。そこから少し話して見回りに戻った先生だけど、さっき一瞬だけ見せたあの瞳・・・明らかに嫉妬していたなぁと、嬉しく思いながら苦笑して職務を全うするのだった。


まあ、接客よりもナンパとかの男客ホイホイみたいになってたけどさ。





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