257 文化祭前日
あっという間に
「明日からだな」
夕飯を食べているとそんなことを言ってくる先生。その言葉に千鶴ちゃんがキョトンとするので、簡単に説明することにする。
「明日から高校生は文化祭っていうお祭りがあるんだよ。千鶴ちゃんも明後日、瑠美おばちゃんと行くって話したよね」
「うん、おまつりたのしみ♪」
嬉しそうに微笑む千鶴ちゃんの頭を思わず撫でていると、先生は苦笑気味に言った。
「テンション低いな。本当に高校生か?だいたいの奴が今日はテンション上がって下手したら泊まり込みまでしてるのにな」
「残念ながらそこまで思い入れはないので。それに、さっきさり気なく差し入れには行ったので大丈夫でしょう」
主に間に合ってない装飾関係の仕事で居残ってるメンバーには一応そんな気遣いもしたので大丈夫だろう。全く興味はなくても、それなりに気遣ってるフリをするのも大切なことなのだ。
「でも、遥香さん今日は残業なくて少しびっくりしました」
「残るって言ったんだがな、基本的に女の教師は早めに帰宅しろとの教頭命令だったからな」
「いいことです」
「男女差別だよ」
「でも、そのお陰でいつも通り3人で食事が出来てますから」
「まあ、そうだがな」
仕事がしたい先生としては不本意なのだろうが、こういう時くらい大人しく早めに帰ってきてくれる方が安心は出来る。夜更かし勢は主に男子多めだから、少し不安もあったしね。
「そういえば、バンドの方がどうなんだ?練習してたんだろ?」
「大丈夫ですよ。一応合わせて問題なさそうだったので、一応聴けるレベルにはなってます」
「ちーちゃんも来るんだ。カッコイイ姿見せろよ」
「おにいちゃんはいつもかっこいいよ?」
キョトンとそんなことを言う千鶴ちゃんに思わずまたしても頭を撫でてしまう。そうしてじゃれていると、先生はそれに微笑んで言った。
「そうだな。私達にとっては当たり前のことだが、それを他の人にも知らしめーーー」
そこでピタリと言葉を止めてから、少しだけ悩んでから先生は言った。
「いや、やっぱりあんまり目立つな。最低限にしろ」
「どっちですか」
「むー、だって・・・」
「わかってますよ」
先生の思考は容易に想像できた。有り得ない話だが、俺が目立って他の女子に目をつけられるのを想像して嫌になったのだろう。まあ、そんな可能性有り得ないが。
いくらボーカル&ギターでも、隣にベースの雅人がいる時点で視線は雅人に集まるだろうからだ。何をやっても目立つのは親友なので俺はそんな可能性は微塵も想像していなかった。
そして、そんな想像をする先生本当に可愛いと思いながら何も知らずに頭を撫でられて気持ちよさそうな千鶴ちゃんも一緒に愛でるのだった。




