255 試着と感嘆
予想通りの反応?
「巽くん、はいこれ」
手渡された衣装はメイド服。俺のサイズに仕立てたのか少し大きめなのだが、もちろんこれは俺が望んで貰ったものではなく、2人との時間のための代償として得てしまうもの。
「お、出来たんだ。これから試着?」
「みたいだね」
渡された目的がわかっているのでそう苦笑すると、雅人は微笑んで言った。
「心配しなくても、普通に似合うだろ。あ、写メ撮っとくな」
「やめい」
そう言ってからさっさと着替えに行く。時間もないし早めに皆に見せてガッカリして貰おうと俺が教室に戻ると何故かピタリと文化祭前の準備の騒がしさが消える。
え、なんで?
「えっと・・・巽くんなんだよね?」
「そうだけど・・・え、何皆して」
雅人や斉藤以外のクラスメイト全員にめちゃくちゃジロジロ見られてから、吉崎が俺に近づいてくると肩をポンと叩いて言った。
「なあ、健斗。お前彼氏は欲しくないか?」
「見さかいなしか。というか絶対いらんがな」
「ま、俺も女の方がいいが・・・にしても似合うな」
「そんなわけないでしょ」
誰かさんがネタと仕返しのためにやってきたことだが、本当に俺は何か大切なものをなくしてるようで虚しくなってくる。まあ、うん、先生と千鶴ちゃんとの時間の確保が最優先だから、一時のプライドとかは捨てて正解だろう。
「やっぱり、いっそフルで出て貰うか。普通に可愛いし客足伸びそう。なんなら1番人気になりそうだな」
「いや、普通にそれ失礼だから。俺だけならともかく他の女子に失礼」
そう注意すると、元気なクラスメイトの女子の菅原さんが苦笑して言った。
「いいよ、巽くん。私達の吉崎への好感度はゼロだから今更気にしないしね。でも、本当によく似合うね」
「それはどうも」
「あ、でも吉崎はともかく、もしかして中条くんとか斉藤くんはこれを知ってて巽くんを推薦したの?」
まあ、そこそこ付き合い長いけどコミケの件くらいしかないはず・・・うん、昔、雅人の母親の巡李さんに冗談で着せられたことはあったけどそれくらいだろう。
「まあな。健斗は昔から女装似合うよ」
「雅人さんよ。語弊がある言い方をしないでおくれ」
まるで何度もしてるようで嫌になる。
「ま、長い付き合いだからな。ある程度知ってたことさ」
「で、ござるな」
そう頷く雅人と斉藤にクラスメイトは納得したように頷いてから作業に戻るのだった。まあ、少なくともこれで仕事が増えたりすることはないだろうが・・・一刻も早く元の姿に戻ろうと俺は着替えに行くのだった。




