252 風邪の時は独り占め
いつもかもw
「はい、あーん」
「あーん」
もぐもぐと、お粥を食べる千鶴ちゃん。自分で食べさせても良かったけど、食べさせて欲しそうにしていたので、思わずこうしてあーんをさせていた。
「どうかな?」
「うん、すごくおいしい」
「それは良かった。ゆっくりでいいからね」
ふーふーして冷ましてから、千鶴ちゃんに食べさせる作業を繰り返すが、こんな単純なことがすごく楽しいのは不思議なものだ。
健康が1番だけど、風邪の看病というのは実はかなり好きだったりする。こうして甘えてくる家族と一緒にいられるのは本当に幸せな時間だと心から思う。
そうして食べさせてから、薬を涙目で飲み終わった千鶴ちゃんを目一杯褒めてから、寝かせるためにベットに横にすると、千鶴ちゃんは嬉しそうに言った。
「えへへ、ちー、おにいちゃんをひとりじめしてる」
「そうかもね。でも、いつももそうだと思うよ」
「いつもはままもいるから・・・でもね、いまはちーがおにいちゃんをひとりじめしてるの」
なんとも可愛い台詞だ。独り占めか・・・確かに看病の時はずっとべったりだしそうかもな。そう思っていると、ふと千鶴ちゃんは思い出したように聞いてきた。
「あのね・・・おにいちゃん、ずっとちーのそばにいるけど、かぜうつらない?」
「うん。大丈夫だよ。俺は丈夫だからね」
「そっかぁ」
ホッとする千鶴ちゃん。そんな心配しなくても大丈夫だが・・・まあ、それだけこの子が優しい証拠なのだろう。
実際これまでも特に風邪がうつったことはないし、多分大丈夫だろう。まあ万が一うつったとしても、別に千鶴ちゃんに非はないので大丈夫だ。まあ、その時は薬飲んで密かに寝ればいいだろうしね。
「ねぇねぇ、おにいちゃん。ねるまでおはなししてくれる?」
「いいよ。何がいいかな?」
「えっとね、なんでもいいよ。おにいちゃんのおはなしちー、だいすきだから」
そう言われると照れるが・・・でも、そんな娘の可愛い要求に答えるのも親の務めだ。そこまで話は上手ではないが、やってやろうと色々と話すことにした。
前に聞いた、子犬の感動的な話やら。昔の友人が語っていた面白話やら、あとはそう・・・家族のことなんかを話していると、いつの間にか寝息をたてていた千鶴ちゃん。
そっと布団をかけなおしてから、優しく頭を撫でる。早く元気になって欲しいという願いと・・・可愛い娘への愛情表現として、こうして側で優しく撫でるのだった。
「お休み・・・早く元気になってね」
そう微笑むとそれに答えるようにぎゅっと手を握ってきたので、よしよしとさらに撫でる。徐々に熱が下がっていくのを感じながらもう1人の対処のために一応準備をするのだった。




