27 青春の定義
青春とは・・・
「お?おーい!健斗!」
弁当を作り終わり、買い物を終えてから先生の家に向かおうとすると後ろからそんな声が聞こえてきた。そちらを向くとよく知る親友が彼女らしき女の子と一緒にこちらへ駆け寄ってきた。
「雅人・・・デート中?」
「おう、お前は買い物か?」
「うん、まあね」
「雅人くんの知り合い?」
彼女らしき子が雅人にそう聞くと雅人は頷いて言った。
「ああ。親友の健斗だ」
「どうも」
そう挨拶すると彼女は俺を訝しげに見てから言った。
「雅人くんの友達にしては随分地味ね」
「・・・地味ですみませんね」
残念ながら地味なのは産まれつきだから。すみませんね、どうも。俺が持つ買い物袋を見てからどこか蔑んだような瞳を向けてくるその子から俺は視線を逸らして雅人に言った。
「雅人、もしかしてまた彼女変わった?」
「そうだけど、よく気づいたな」
「土曜のこの時間にデートしてるってことはそうなんでしょ?」
長年の付き合いから親友の特徴を掴んでいるのでそう言うと雅人は笑いながら言った。
「やっぱり、お前にはお見通しか」
「当たり前だよ。何年親友やってると思ってるの?」
「かれこれ何年になるだろうな」
二人でそんな会話をしていると、彼女か雅人の腕を引っ張りながら言った。
「ねーねー、早く行こうよー」
「わかったよ、たく・・・んじゃ、また学校でな」
「ああ」
そう言ってから二人は遠ざかっていく。彼女と仲良くデートをするという青春を全く羨ましくないと言えば嘘になる。俺だって年頃の男だ。普通に彼女を作って楽しい学園生活を夢見ないわけではないが・・・
「ま、俺には雅人みたいなルックスも話術もないからなぁ・・・」
叶わぬ夢とため息をつく。まあ別にいいんだけどね。俺にはそういう青春を過ごすことは出来ないとわかっているから。それに別に俺は今の生活に何の不満もない。誰かのために尽くすことは嫌いじゃない。ましてや先生や千鶴ちゃんのために頑張るのは楽しい。
笑顔で俺の料理を食べる二人を見れば頑張ろうという気持ちになる。1日の疲れもそれまでの苦労も全てがチャラになる。
女の子と過ごす青春、友達と過ごす青春、趣味を楽しむ青春、学業に専念する青春、部活に専念する青春、色んな青春があるが、俺はこれでいい。いや、俺はこれがいい。
「さて・・・早く戻って夕飯の準備をするか」
さしあたっては夕飯の準備をしよう。先生と千鶴ちゃんが美味しいと言ってくれるような俺にできる最高の料理を。そんなことを考えながら俺は先生の家へと戻るのだった。