26 おやつはパンケーキ
3時のおやつ
「にしても・・・本当に綺麗になったな」
食事が終わりテレビを見ていた先生がそんなことを言う。俺は家事の手を休めずに言った。
「遥香さんの方が綺麗ですよ・・・みたいなキザな台詞言った方がいいですか?」
「そんなリアクションを求めてはいないが、本心からの台詞なら受け取ろう」
「まあ、事実ではありますが、どうせなら夜景が見えるレストランで言いたいものです」
「お前にそんな金ないだろ?」
「未使用のバイト代と将来のための貯金があるので出来なくはないです」
そう言うと先生は意外そうに言った。
「お前の年頃なら万年金欠でもおかしくないだろ?趣味ないのか?」
「家事が趣味ですからね。まあ、あとはスマホで無料小説読むか、図書館で本借りてくれば事足りますから」
「友達と遊んだりしないのか?」
「皆彼女とデートして青春楽しんでますから」
「・・・悪い、前も聞いたな」
見なくても先生が哀れみの視線を向けてきているのが分かる。い、いいんだよ。俺はこれが青春で。それに別に全く友達と遊ばないわけではないし。たまにカラオケとか行くし。
「それはともかく・・・そろそろおやつ出来ますよ」
「・・・!」
その言葉に千鶴ちゃんが反応したのがわかった。
俺は盛り付けをして二人の前に皿を持っていく。
「これは・・・ホットケーキ?」
「まあ、間違ってませんがパンケーキでしょうか?」
「違いがわからねーよ」
「俺も詳しく知りませんけど、アイスと果物多めなので俺基準だとパンケーキです」
本日はパンケーキを作ってみた。久しぶりに作ってみたけど、この手の生地は生地オンリーでも美味しそうに見える。そんなことを思っていると先生が俺の分がないことに気づいたのか聞いてきた。
「お前は食べないのか?」
「あとで食べます。今から自宅に戻って父親の弁当作って買い物してきてから戻りますので二人はゆっくりしててください」
「・・・大丈夫か?」
少しだけ心配そうな表情を浮かべる先生。俺はそれに笑顔で答えた。
「大丈夫です。体調管理には自信があるので」
「私が言える台詞ではないが、無理はするなよ。体調崩したら意味がないからな」
「ええ、大丈夫ですよ。むしろ俺は遥香さんが心配です。仕事好きなのはいいんですが、遥香さんも無理はしないでください」
ただでさえ最近の教師という仕事はオーバーワークが多いと聞く。しかも先生は自分の仕事が大好きなのでかなり心配なのだ。
「・・・まあ、とにかく無理なら言ってくれ。ちゃんとフォローするから」
「ありがとうございます」
やはりこの人は優しいと俺は思わず微笑んでしまうのだった。