239 これでも一応友人
友人
「よう、おはよう健斗!」
教室に着くと先に来ていた吉崎がそう挨拶をしながら歩いてきた。この時間にいるのは珍しいので驚きつつも俺は挨拶を返す。
「おはよう、早いね」
「ああ、まあなんだ。昨日は無理に誘ったから、悪いと思ってな、早く来て待ってたんだ」
そう言ってから頭をかく吉崎。まあ、別に吉崎が悪いわけではないが、合わないものは合わないので仕方ない。
「あれから楽しめたかな?」
「あぁ、あの後地味なのが1人抜けてから、なんとか1人ゲットしたぜ!」
「それは何より。まあ、俺はああいうのは苦手だから、今後は誘われても行かないけどね」
「わかってる。まあ、俺も流石にやり過ぎだとは思ったからな。悪かったな」
吉崎的にも、あれはないのだろう。まあ、それでも1人ゲットした時点で、ある意味凄いが。
「そういや、お前が出ていってからすぐに抜けた地味な子、お前を追いかけたみたいだったけど、知り合いだったのか?」
「少しね」
正確には、全く知らないのに似たような境遇の存在、ってだけだけど。
「ふーん、まいいけど。あ、そういや、数学の課題やってるよな?写させてくれ」
「たまには自分でやるか、他の人に写させて貰いなよ」
「だって、雅人は途中式すっ飛ばして答え書くし、斉藤は写させて貰う度によくわからないアニメ勧められんだぜ?恐ろしくて言えないんだよ」
あの2人らしくて、思わず微笑んでしまう。
「頼むって。なんでもするから」
「えー、別に吉崎になんでもされてもねぇ」
正直全く嬉しくない。先生や千鶴ちゃんなら無条件でお願いを聞くかもだけど。まあ、それでも内容によっては2人のために断ることもなくはないか。
「よ、おはよう」
「おはようでござる」
そんなことを話していると、当事者の2人がタイミング良く入ってきた。
「おはよう2人とも」
「あれ、吉崎早いな」
「本当でござるな。さてはまた課題忘れてきたのでけんちゃんに泣きついていたのでござるな」
斉藤の推理にギクリとしている吉崎にため息をついていると、雅人がこっそりと聞いてきた。
「昨日、なんかあったんだろ?大丈夫か?」
「何が?」
「吉崎にどっか連れてかれてただろ?」
目ざとい親友に頷いてから俺は苦笑して言った。
「ちょっとね。面倒事を済ませて来ただけだよ」
「そっか。なんかあれば言えよな」
頼もしい親友はそう言ってから、吉崎いじりに参加するのだった。まあ、なんだ。これで吉崎からこの手のことで誘われることはないだろうしいいかなと思ってから普通に会話に混じるのだった。
まあわなんだかんだで吉崎も俺の友人の1人には変わりないしね。




