234 思わぬ出会い
似たような
「あ、あの!待ってください!」
店から出て少し歩いていると何故か後ろから声をかけられる。振り返るとそこにはさっきカラオケボックスにいた地味目の女の子が慌てて来たのか息を荒らげてそこに何故かいた。
「えっと、何か?」
全くといっていいほどに予想外のことに驚きつつ聞くとその子は少しだけ声を潜めて聞いてきた。
「あの・・・もしかして、人妻さんか何かと付き合ってますか?」
「いきなり失礼なことを聞くね」
何故そんな言葉が出てきたのかと驚いていると、その子は至って真剣な表情で言った。
「私、わかるんです。危険な恋をしてる人って。私もそうですから」
「危険な恋?」
「はい。先生と付き合ってます」
ドクン。その言葉に俺は少しだけ驚いてしまう。こんなに地味な顔をして・・・いや、人のことは言えないかもだけど、それでもそんな大胆なことに驚いてから俺は言った。
「とりあえず、場所を変えようか」
こんな場所でする話ではないので、近くの喫茶店に移動して話をすることにする。
「あ、そういえば、自己紹介がまだでしたね」
注文をしてからそんなことを言ってきたその子。確かに自己紹介はほとんど聞いてなかったのでその通りなのだが・・・この様子だとこの子も聞いてなかったんだなと思っているとその子は言った。
「私は須藤真弓っていいます。高3です」
「巽健斗。同じく高3」
「巽さんですね。それで本題なのですが・・・さっきはありがとうございました」
「なんのことかな?」
「私が困ってたのを、助けてくださいましたから。そのお礼です。先生以外と、キスなんてしたくありませんから」
全くその通りな言葉に頷きそうになりながらも少しだけ警戒しておく。向こうの言葉が真実とは限らない。ないとは思うがさっきの連中に焚き付けられたという線も考えていると、須藤さんはそれを察したように言った。
「別に無理には聞きません。ただ、私は同じ境遇の人に会えたのが嬉しかったので、こうして話がしたかったんです」
「さっきの言葉は事実だと?」
「ええ、あ、一応言っておくと先生とは正式に付き合ってます。妄想とかヤンデレの思い込みとかではなく、卒業したら結婚するために今は同居もしてます」
ますます俺に近いとというか、似たような境遇に驚いてから俺は思わず聞いていた。
「俺がそれを言いふらすとは思わないの?」
「それなら即座に、既成事実を作って逃げますから大丈夫です。何よりさっきの様子から、巽さんが、誰かに想いを寄せているのはわかってますから」
なんとも鋭い勘に驚きつつも、俺は少し考えてから、話を聞くことにするのだった。




