25 昼なんです
徐々にちーちゃんを餌付け中?
「ただいまー」
「・・・ただいま」
玄関から先生の元気な声とそれに合わせたような千鶴ちゃんの声が微かに聞こえてきたので、俺は一度手を洗ってから出迎えに行った。
「おかえりなさい。ご飯もうすぐ出来ますよ」
「おう!にしてもなんか玄関綺麗に片付いてるな」
「まだ半分くらいですけどね」
「そうか。ところで私の言い付けは守ったのか?」
その言葉に俺は頷いて言った。
「裸エプロンは諦めました」
「そっちじゃねーよ。寝室の隣の部屋に入るなってことだよ」
「あ、そっちでしたか」
まあ、わかってはいたけどね。
「気になりましたが我慢しました」
「そうか。しかし、お前は何も聞かないんだな」
「遥香さんが話したいなら聞きます」
そう言うと先生は苦笑気味に言った。
「今のお前にはまだ早いから話せない。ま、時がきたらいずれ話すさ」
「わかりました。じゃあ、着替えてご飯にしましょうか」
「ん?着替え必要か?」
「遥香さんスーツじゃないですか、千鶴ちゃんも保育園の制服から着替えた方がいいでしょうし」
「わかった、わかった。ちーちゃん行くぞ?」
「・・・うん」
二人で着替えにいく。俺は二人が来るまでに最後の仕上げを済ませるために台所に向かった。
「お、昼はハンバーグドリアか」
「・・・はんばーぐ!」
二人の前に熱々の皿を置く。正直千鶴ちゃんが火傷しないか心配ではあったが、運ぶまでに少しだけ熱を取れたので、あとはふーふーしてゆっくり食べてもらうべきだろう。それに、昨日の様子を見るに千鶴ちゃんはハンバーグをゆっくり味わって食べるので、多分大丈夫だろう。
「それにしても、もっと野菜ふんだんなメニューになるかと思ってたけど案外入れないんだな」
「お望みなら野菜オンリーのメニューを作りますがどうします?」
「ははー、全力で遠慮する!」
「ですよね」
まあ、わりと野菜混ぜてるけど先生には言わないでおこう。意識すると多分よけるようになりそうだしね。
「熱いので冷ましながら食べてください」
「おう!ちーちゃん、気をつけて食べなさい」
「・・・うん」
ハンバーグを見て目をキラキラさせている千鶴ちゃんに先生は優しくそう言う。親子の会話というのはいつ見ても微笑ましいと思う。俺もいずれは千鶴ちゃんに父親扱いしてもらえるようになりたい・・・いや、なろう。絶対に。
本日は昨日の残りと今ある食材で作ったありあわせドリアだけど、そこそこ美味しくできたと思う。まずは徐々に千鶴ちゃんに近づいていき、いずれ一気に距離をつめる。
あとは、先生とも更に仲を深めたいね。
そんなことを思いながら俺は二人に微笑みながら食事をするのだった。