230 事後報告
唐突ですみませんm(_ _)m
「あぁ、そうだ。健斗」
千鶴ちゃんが起きてからご飯を食べ終わり片付けをしていると先生は思い出したように聞いてきた。
「来週は暇か?」
「えっと、そうですね。クラスの出し物の準備も、ある程度免除させて貰えそうなので」
「確かメイド喫茶だったな?」
「・・・はい。初日の午前中だけ女装するのと引き換えに得られました」
まあ、本当は女装なんてしたくないけど、それで休日と放課後の準備を免除させて貰えるなら、安いものだ。一時の恥と、家族の時間。比べるまでもないだろう。
というか、ウチのクラスでメイド喫茶やるのはわかるけど、わざわざ俺が女装しなくても普通に似合いそうな女子は多いだろうに。まあ、この裏側に雅人や斉藤、吉崎が絡んでるのは間違いないだろう。
特に吉崎は、バンドの恨みを晴らそうとしてるに違いない。
「ま、お前の女装は楽しみだが、無理に引き受けなくてもいいんだぞ?」
「いえ、俺は少しでも2人と一緒にいる時間が欲しいので」
「・・・そうか」
嬉しそうに微笑む先生。どうでもいいけど俺の女装楽しみなのって、本心じゃないよね?誰得なやつだよね?うん、そのはず。
「ま、それなら話が早い。ちーちゃんと3人で出掛けたくてな」
「お仕事は大丈夫なんですか?」
「ああ、今回の埋め合わせがしたいんだよ。付き合え」
「わかりましたよ」
無理に埋め合わせなんてしなくてもいいとは思うけど、遥香さんがそう言うなら大丈夫だろう。何より3人で出掛けるのは楽しみだ。
「それで、どこに行くんですか?」
「実家だよ」
・・・うん?
「あの、それって・・・」
「ああ、私の実家だ」
お出掛けのスケールが違っていた。いや、確かに実際に黒羽家の本家には行ったことないけど・・・埋め合わせとはいかに?
「まあ、大丈夫だ。山が近いからタヌキとかキツネがいてちーちゃんは嬉しいだろうし、私の祖母が農家をやってるから、お前にも悪い話じゃない。それにお前は、私の両親には既に会ってるだろ?」
「そうですね、とりあえず手土産は一応持ってきますが・・・何か気をつけた方がいいことありますか?」
そう聞くと遥香さんは少しだけ考えてから言った。
「私の祖母は随分な歳なんだが、結構気難しいから、そこだけ気をつければいいかな」
「わかりました。まあ、夏休みは結局行けませんでしたし、正式に挨拶もしたいので、構いません」
千鶴ちゃんは少しだけ退屈する可能性もあるけど、本家に挨拶に行くのは必要なことだ。それを年内に済ませられるなら、それに越したことはないだろう。
そうして俺は、唐突に決まった本家行きのために、準備を進めるのだった。




