224 親子競技肩車かけっこ
親子競走その一
「まさか、こうして健斗くんと競う日が来るとはね」
隣のきよぽんが、そんなことを言ってくる。午後は親子での競技をいくつかやってから、借り物競走をして、最後にリレーをするのだが、その初っ端が『親子対抗肩車かけっこ』という、子供を肩車しながら走る競技らしい。
まあ、とはいえ、かけっこと言っても転んで子供に怪我をさせないように緩やかに歩くことが多いと先生からは聞いている。そして、この競技は男の家族が来ている子供のみ参加の競技で、まあ、保育園としても少しでも多くの家族に運動会に参加して欲しいという取り組みの1つなのだろう。
なので、学年バラバラで参加になるので、こうしてきよぽんと戦うことになるのだが・・・
「まあ、お互い頑張ろう」
正直、俺としては千鶴ちゃんを肩車出来るので嬉しいが、そこまで勝ちにはこだわれなかった。千鶴ちゃんも俺に肩車されるのが嬉しいらしく、勝負にはそこまで積極的ではないので仕方ないが・・・何故かきよぽんはそんな俺の様子からわかってるように頷いて言った。
「なるほど。余裕だね。でも僕もそこそこ体力には自信あるから負けないよー」
なんでこんなにはしゃいでいるのだろうと思いながら、数名の父兄と共に自分の子供を肩車する。この時点で既に辛そうな親御さん多めなので、大丈夫だろうかと思いつつ、千鶴ちゃんを肩車する。
「たかーい♪」
「よし、しっかり掴まっててね」
「うん!」
「それでは、位置についてーーー」
ゆるりと準備する。隣できよぽんが張り切っていたが気にせずにおく。
「ーーーよーい、どん!」
その合図で軽く歩き出す。が、しばらく歩いてから何故だか俺の前を歩く親御さんはおろか張り切っていたきよぽんすら前にはいなかった。振り返って確認しても良かったが俺は千鶴ちゃんに聞いていた。
「千鶴ちゃん。後ろ見える?」
「うん。みえるー」
「他の子のお父さんとかお兄さんどうしてるか見える?」
「えっとね、すごくゆっくりあるいてる」
「・・・そっか、ありがとう」
きよぽん・・・あれだけ張り切ってたのに。まあ、軽くと言っても先生や千鶴ちゃんと一緒の時の歩幅ではなく、普通に歩いているのだが・・・やっぱり肩車してかけっこはわりと無理があるじゃないかなぁと思いながら、悠々と1位でゴールする。
ちなみにゴールした頃に、他の親御さんは大体中間地点にいたので、これは遅いのではなく普通に早く歩きすぎたと悟った。まあ、そんなことも、俺に肩車されて嬉しそうにしていた千鶴ちゃんを見ればどうでも良くなったが。




