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221.5 来年こそは

「それじゃあ、今日はここまでな。きちんと復習しとくように」


その言葉で教室が一気に賑やかになる。四時間目の授業が終わって昼休みに入るのだから当然かもしれないが、それでも教壇に立ってる時に無意識に、何度か健斗の席に視線を向けてしまっていたのは、他の生徒達は気づいてないようでホッとする。


「黒羽先生、お疲れ様です」


職員室に着くと、隣の席の二年生の担任の先生で仲の良い同性の吉川先生がそう声をかけてきたので遥香はそれに頷いて言った。


「お疲れ様です。吉川先生もさっきまで授業だったんですよね?」

「ええ、せっかくだからお昼一緒に食べましょう」

「そうですね」


そう言ってから2人でお弁当を取り出すと、それを見ていた吉川は思い出したように言った。


「そういえば、黒羽先生お弁当増えましたよね。ご自分で作ってるのですか?」

「いえ、これは私の恋人が作ってくれたんです」

「まあ!やっぱり黒羽先生、良い殿方と巡り会えたのですね」


その言葉に近くで聞いていた他の教師が多少驚いたような表情を浮かべるので遥香は少しだけ苦笑してから言った。


「まあ、恋人というより婚約者ですがね。来年になったら結婚します」

「そうでしたか・・・あ、でもよく娘さん、認めましたね」

「むしろ、娘が婚約者に懐いてるんですよ。今日も運動会だったんですが、代わりに出て貰ってます」

「それは凄いですねぇ。まあ、3年生の担任はお忙しいでしょうしね」

「ええ、まあ」


そう言いながら弁当箱を開けてから遥香は少しだけ驚いてしまう。いつもなら普通にご飯が入っているエリアにはおにぎりが入っており、千鶴の好物がふんだんに使用されているお弁当だったのだ。いつもなら若干変えるはずなのに全く同じものに驚いてから思わず微笑んでしまう。


(全く・・・アイツはどこまでも優しいやつだなぁ)


そんなことを思っていると、吉川は遥香の様子に聞いてきた。


「黒羽先生、なんだか嬉しそうですね」

「ええ、つくづく私には勿体ない、立派な婚約者だと思いましてね」

「ふふ、仲がよろしいようで何よりです」

「ええ。来年は絶対休みを取りますよ」


そう言いながら遥香は昼食を早々に終わらせてから、人気のないところで健斗からのメッセージの返信をする。千鶴の運動会の様子とお昼の写真をいくつかとちゃんとお昼を食べたかというメッセージが送られていたので、画像を保存してから嬉しそうに返信を書く。


文章からも伝わってくる健斗の優しさに触れながら、遥香は何がなんでも早く帰ろうと決意するのだった。


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