24 秘密の部屋
ジェラシー主人公
そうして掃除を続けているといつの間にか10時を過ぎていたので、俺は休憩がてら昼食の準備をしようと台所に向かう途中でその部屋に視線がいった。先生の寝室の隣の部屋。絶対に入るなと先生から言われている部屋だ。
「これはあれだよな。『押すなよ押すなよ』的なノリで見たら後悔することになるやつだよな」
ギャグ的なノリならこの部屋にゴミとかを押し込めていたり、腐臭がして開けてお説教フラグだけど、なんとなく先生が入るなと言ってた時の表情がやけに真剣なので俺には開けることはできなかった。
とはいえ・・・
「気になるよなぁ・・・もしかして先生の前の旦那さんの部屋とか?そういえば、先生一回離婚してるって聞いたことがあるけど・・・」
と、そこまで考えて俺は少しだけ寂しい気持ちになった。先生も前は他の男を愛していて、千鶴ちゃんも父親に甘えていたのかもしれないと思うと疎外感と、多少の嫉妬もあった。
あんまり人に執着しないタイプだと思っていたんだけどなぁ。友達でも家族でも。いや、でも・・・
「そっか・・・母さんが死んでから初めてかもしれない」
優しく微笑む母さん。いつもベッドに寝ていた記憶しかないけど俺は母さんのことが大好きで大好きで、マザコンと呼ばれてもいいくらい大好きだった。母さんが少しでも喜ぶように家事をお祖母ちゃんに教わって、弟の海斗と、あの頃はまだ女装してなかった父さんのためにやっていた。
「なんでだろ・・・先生のことを詳しく知りはじめてからそんなに日が経ってないのに」
たった数日で自分がこんなに他人に執着するとは思わなかったが、それでも俺は先生と千鶴ちゃんにある種の独占欲がわいてきてしまっているみたいだ。なんでだろ?一目惚れってやつなのかな?
「女々しいよなぁ・・・」
先生にまた乙女とか言われそうだ。いや、乙女というより悪く言えばストーカー予備軍とか?自分でもキモいと思うが、まあこの感情を二人に出さなければ問題ないだろう。思う分には自由のはず。
まあ、どのみちこの部屋には入らない方がいいだろう。先生の信頼を損なうのもそうだが、入って前の旦那の痕跡を見て苦しい気持ちになるのは嫌だからだ。まあ、前の旦那の部屋とは限らないし、ただ単に見られたくないものがあるだけかもしれないけど。
見られたくないもの・・・なんだろ?男なら思春期の衝動的な本やらDVDとか辺りが妥当だけど女の秘密は見当がつかない。
なんにせよ。
「お昼の準備するか」
気持ちを切り替えて俺は台所に向かう。先生と千鶴ちゃんに美味しいご飯を作るのも俺の仕事だしね。うん。