203 だからお前は俺のヒーロー
きっと
「おお、千鶴ちゃん歌上手いね!」
「えへへ、そうかな?」
楽しそうに歌う千鶴ちゃんとそれを褒める薫ちゃん。姉妹のように仲良くなれたのは、きっと薫ちゃんの持ち前の明るさと千鶴ちゃんな素直さの結果なのだろうと思いながらそれを眺めていると、隣の雅人がスマホを弄りながら言った。
「悪いな。せっかくの家族の時間に割って入って」
「というか、雅人が休日に家族サービスなんて珍しいね」
知る限りにおいて、休日は毎回変わる彼女とのデートのはずなのにこうして家族サービスしているので思わずそう言うと面倒そうに雅人は言った。
「ババアがうるさくてな」
「巡李さんかぁ・・・」
チラリと見れば巡李さんは遥香さんに色々と聞いてるようだった。部屋に入ってからずっとそうなので内容はわからないが。
「ま、安心しろ。あれでもババアと薫は口が硬いし、口外はしないだろう」
「雅人はどうなの?」
「親友の幸せに茶々入れるような奴に見えるか?」
「ま、なんだかんだで優しいしね」
そう言うと雅人はため息混じりに言った。
「お前には負けるよ。そういえば、黒羽の娘やっぱりアイツに似てるな」
「母娘だからね」
「そうかい。薫も最初は軽く嫉妬してたが、あんなに早く馴染むとはな」
「嫉妬?誰に?」
訳がわからずにそう聞くと雅人は頷いて言った。
「お前のこと、それなりに慕ってたからな。下手したらお前と家族になってたかもな」
「それはないでしょ。薫ちゃんみたいな美少女が俺となんて。それに、それがなくても俺はきっと遥香さんに惚れてたからね」
そう言い切ると雅人は少しだけ驚いたような表情を浮かべてから苦笑して言った。
「黒羽のこと結構マジなのな」
「何を今さら」
「だよな。すまん。だがお前がそんなにマジなのは久しぶりだったからついな」
「そうかな?」
これでも結構素直に生きているはずだが。
「俺が知る限りにおいては、俺を助けた時と中学の頃に自殺まで追い込まれたクラスメイトを助けた時以来かな」
「そんなことあったっけ?」
素で覚えていなかった。確かにそんなこともあったかもだけど、色々必死すぎでそこまで鮮明には覚えてない。
「ま、少なくともお前がマジな時には誰も悲しまないからな」
「まるでヒーローみたいだね」
冗談半分でそんなことを言うと雅人は珍しく少しだけ微笑んでから言った。
「ああ、俺にとってお前はヒーローなのかもしれないな」
「・・・過大評価すぎるよ。俺はそんな立派な人間じゃない」
そう言いながら俺は楽しそうに歌う千鶴ちゃんを眺めて飲み物を飲むのだった。




