200 二学期とバンド
新学期
「なぁなぁ、バンドしないか?」
色々あった夏休みも終わり、新学期初日。無事始業式を終えてから帰宅をしようとする前にそんなことを言ってきた吉崎に一緒に聞いていた雅人は思わずため息をついて言った。
「いくら、受験勉強が嫌でも今からミュージシャン目指すのは厳しいぞ?」
「違うっての!文化祭のステージ一緒に出ないかってことだよ!」
「文化祭かぁ・・・」
「あ、お前今の今まで忘れてただろ?」
実はそうだったりする。今月にある千鶴ちゃんの運動会が楽しみすぎてそんなことは普通に忘れていた。
「せっかくの高校最後の文化祭だぜ?派手なことしてモテたいじゃんよ!」
「それが本音か」
「吉崎らしいでござるなー」
「てなわけで、俺ら4人でバンドやろうぜ!」
俺、雅人、斉藤、吉崎の4人でバンド?
「いやいや、流石に無理でしょ?雅人や斉藤はともかく俺は楽器出来ないんだけど」
「練習すりゃ大丈夫だって。来月の文化祭には間に合うだろ」
「んー、俺はあんまり放課後練習出来ないんだよなぁ」
千鶴ちゃんの面倒と、家事をしたいのだ。そんなゆとりはない。そんな俺の言葉に雅人が頷いてから言った。
「俺も正直面倒だから。パス」
「うーん、拙者もちょっと・・・」
「んだよ、ノリ悪いな。やろうぜ!」
「そう言われても・・・」
正直文化祭に対するモチベーションはかなり低い。皆が楽しみにしていても、俺はそこまではしゃげる気がしないのだ。それにバンドとかで放課後の時間を潰したくないのだ。
「とりあえず、健斗は時間がないなら、昼休みにでも練習でどうだ?それで無理そうなら諦めるよ」
「まあ、それなら・・・」
昼休みの時間を潰すのは嫌だけど、まあそれでもそれで納得するなら仕方ない。
「雅人はベースな。ギターより楽なはずだし。斉藤はキーボード。俺がドラムで、健斗がギター&ボーカルな」
「いやいや、待て待て」
何故かボーカルまで上乗せされたので思わず抗議すると三人揃って不思議そうに言った。
「この中で一番歌上手いの健斗だろ?」
「だな」
「で、ござるな」
「いやいや、雅人が一番だと思うけど・・・」
「ボーカルまでやるなら本気でパス」
「・・・というわけで、消去法で健斗がボーカルな」
そんな感じで何故か俺がボーカルとギター担当にされたけど・・・ま、まあでも昼休みの練習で出来なければ諦めてくれるみたいだし大丈夫かな?
そんな感じにこの時の俺は楽観的になっていたのだが・・・後から思うのは本気で辞退すれば良かったという後悔だ。いや、自分でも思うのは人間そうそう上手く事か運ばないものだということだ。うん。




