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189 ちーちゃんのお願い

お願い

「ねぇねぇ、おにいちゃん」

「ん?なにかな?」


コミケから帰ってきてから、数日後のこと。おやつにお土産の東京バナナを食べていた千鶴ちゃんが何かを言おうとしてやめた。


「うんうん、やっぱりなんでもない」

「そっか。でも俺は千鶴ちゃんが何を言おうとしたのか気になるかな」


そう言ってから隣に座ると千鶴ちゃんを膝の上に乗せてから言った。


「何か言いたいことあるんじゃないの?」

「でも、おにいちゃんにめいわくかけるかも・・・」

「そんなこと気にしなくていいんだよ。家族なんだから」


その言葉に千鶴ちゃんはしばらくしてからポツリと言った。


「あのね・・・ちーのうんどうかいきてくれるんだよね?」

「もちろんだよ」

「あのね、あのね・・・ちーといっしょにおやこきょうそうでてくれる?」

「え?それはもちろん出るつもりだよ」


というか、そもそもそれに出るためにその日は学校休む予定だったから。まあ、担任公認のサボりなのだ。そうして俺が答えると嬉しそうに顔を輝かせる千鶴ちゃん。


「ほんとに?やったー♪」

「そんなに嬉しいのかな?」

「うん。すごくたのしみ」


考えてみれば千鶴ちゃんはこういう行事に親が来たことはほとんどないのだろう。忙しい先生が休めるわけもなく、スルーしてきたのだから俺なんかでも嬉しいのだろう。よし。


「じゃあ、お弁当は張り切って千鶴ちゃんの好きなものを入れるからね」

「わーい。じゃあ、ちーおにいちゃんのはんばーぐたべたい」

「勿論だよ。とびきり美味しいの作るよ」

「ありがとう、おにいちゃん!ぎゅー」


そう言いながら抱きついてきた千鶴ちゃん。最近は自分からこうして甘えてくるので、本当になついてくれたのだと嬉しくなる。


「あのね、あのね、おにいちゃん」

「なんだい?」

「おにいちゃんはずっとままとちーといてくれる?」

「当たり前だよ。千鶴ちゃんが好きな人と結婚しても、ずっと、家族だ」


言ってて少しだけ寂しくもなる。いつかは千鶴ちゃんを嫁に出さないといけないと思うと少しだけ複雑になるが、それでもなんとか気持ちを切り替える。親のエゴで千鶴ちゃんの人生を歪ませたくはない。本当に好きな人と幸せになって欲しい。


父さんや海斗みたいにいつかは千鶴ちゃんも親離れする日がくるのかもしれない。それでも俺はこのこの子の幸せのためなら笑ってそれを受け入れてみせる。大切な家族には幸せになって欲しいからだ。


だから俺はこうして残り少ない千鶴ちゃんの時間に少しでも自分のことを焼き付けるように甘やかすのだった。




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