20 デザートとおつまみ
少しだけお母さんぽいところを見せる先生(^^)
「さて、今日はデザートも用意しました」
そう言ってから俺は皿を片付けてことりと机に置く。
「これは・・・クレープか?」
「ええ。家でも簡単に作れるイチゴチョコクレープです」
「クレープを家でって女子力高いな」
「せめて主夫力と言ってください」
俺は別に父親と同じ道へ行くつもりはない。父親の仕事を認めてはいるし、そういう趣味の人を否定するつもりはないが俺はあくまで主夫と父親にしか興味がないので否定する。
「まあ、食べてみてください。遥香さんはどうせ今日も俺が帰ってから晩酌するんでしょうが」
「ん?なんで知ってるんだ?」
「誰が台所を片付けてると思ってるんですか?それくらいは把握できますよ」
「そうか・・・お前も酒はほどほどにとか言うつもりか?」
どこか拗ねたようにそう言う先生に俺はため息混じりに言った。
「健康的にはそう言いますが子供の前と妊娠中以外なら大目にみますよ」
「ん、そうか」
そう言ってからクレープを食べる先生。その表情はどこか嬉しそうだったが・・・何故?
「美味いな。甘いものは久しぶりだ」
「それは良かった。今日はおつまみを作りましたから晩酌するならそれを食べてください」
「つまみまで作ったのか?」
「遥香さんの体調管理も俺の仕事ですから。ビールに合うものなら野菜でも食べますよね?」
「おう!お前の料理は美味いからな!」
さらりと言われるがそれで嬉しくなる俺もかなりちょろいなと思いつつ俺は先ほどから無言でクレープを食べる千鶴ちゃんに聞いてみた。
「千鶴ちゃん美味しい?」
「・・・・・・・(もぐもぐ)」
「千鶴ちゃん?おーい?」
「・・・・・・・(もぐもぐ)」
無言でクレープを食べる千鶴ちゃん。無視されたことが地味にショックで先生を見ると先生は苦笑気味に言った。
「ちーちゃんは大好きなお菓子を食べる時は無言になるんだよ。だから無視されたわけではないよ」
「千鶴ちゃん本当に集中力高いですね・・・」
ここまで周りが見えなくなるほどに集中すること俺にはあっただろうか?多分家の掃除か料理をしているときくらいだろう。隅のホコリとかが凄く気になって時間を忘れてやって気がついたら休みの日なのに夜中ということは希にあるけど・・・それはそれで問題だと前に父さんと弟の海斗に言われたことあったな。
やがて全部食べ終えたのか千鶴ちゃんは皿をじーっと見つめてからこちらを見て言った。
「・・・おかわり」
「ちーちゃん。今日はそれくらいにしときな」
「・・・ママ!・・・おねがい!」
「ダーメ。許しません」
珍しく先生が千鶴ちゃんを叱っている姿を見て俺は本当にこの人が母親やっていたんだと少し意外に思いつつ言うべきところではきちんと言える母親なのだと少しだけ好感度が上がったのだった。
しばらく千鶴ちゃんは叱られてふくれていたがやがて俺に視線を向けて言った。
「・・・おかわりだめ?」
物凄く試されている気がするが俺は心を鬼にして言った。
「えっと、千鶴ちゃん。今日はもう材料ないからデザートはまた明日ね」
「・・・むー」
「膨れる顔は可愛いけど、休みの日なら好きなものなんでも作るからそれで勘弁してくれないかな?」
「・・・わかった」
納得したのか大人しく頷いた千鶴ちゃん。まあ、本当は作ろうと思えば作れるけど流石に量は調整しないとね。いくら食べても太らなくても、食事量はセーブする必要があるだろう。
そんな風に千鶴ちゃんが先生とお風呂に向かったのを確認してから俺は食器の片付けと掃除に入るのだった。