19 天使の食事
少しだけ距離が縮まる予感?
「うん、今日も美味いな!」
ハンバーグを食べつつそう笑顔を浮かべる先生。俺はそれに少しほっとしてから言った。
「遥香さん、おかわりもあるので言ってください」
「おう!」
「ちなみに野菜もおかわりありますがいりますか?」
「それはいい」
きっぱりとそう断言する先生。大人としてどうかと思うが、まあ、好みは人それぞれだから仕方ないね。それでもハンバーグに若干入れた野菜はあまり気にした様子はないから先生は多分こういう類いの作り方をすれば大丈夫なのはわかる。
そして千鶴ちゃんはーーー
「・・・んー!」
ーーー物凄く美味しそうにハンバーグを食べていた。一口食べてほわーという笑顔を浮かべるものだから思わず笑みが浮かんでくる。それでも千鶴ちゃんはいつもならそれに反応しそうなものだが今日はハンバーグに夢中なのかまったく気にとめないようだ。
「ちーちゃんは本当にハンバーグ好きだなー」
「遥香さんも好きなものだとこういう反応しますか?」
「おいおい、仮にも私は大人だぞ?大人なりの反応があるんだよ」
「是非見たいですが・・・何が好きなんですか?」
「んー、焼き肉とか?」
「焼き肉と一緒なら野菜食べてくれますか?」
「肉しか食わないなー」
はっはっはーと笑う先生。それはそれでどうかと思うが確かにビールと焼き肉を楽しむ先生のイメージはしっくりきてしまうのがなんとも残念だ。
「まあ、今日本当はカレーでもいいかと思ったんですがね、千鶴ちゃんの反応みてこっちしかないかと思いまして」
「ちーちゃんはハンバーグ大好きだしなー。ちなみにカレーは甘口じゃないとダメだからな」
「ほうほう」
なんとも可愛い味覚だが、まあカレーの辛さが苦手な人って意外と多いから別におかしいとは思わないよね。
「ちなみに遥香さんは辛口でも大丈夫ですか?」
「最高で中辛、ベストは甘口だな」
先生も可愛い味覚をしていた。しかし本当にこの親子は味覚が似ているというかまあ確かに今までの食生活で味覚というものは決定されるけど、それにしたってどうしたらこんなに野菜から距離を取れるのか・・・
「ん?」
と、そこで横から俺の袖がひかれたような気がして、見るとそこには怯えつつハンバーグの皿をだす千鶴ちゃんの姿があった。
「どうしたの?おかわり?」
「・・・うん」
こくりと頷く。千鶴ちゃんがおかわりするとは思わなかったので多少驚いてしまったが俺はなんとか体制を整えてから笑顔で言った。
「わかった。すぐに準備するね」
「私もおかわり!」
「はいはい。すぐに準備しますから」
そんな風に二人の分を新しく準備しつつ俺は美味しそうに食べる二人になんとなく笑みを浮かべるのだった。