177 プレゼントのチョイス
晩酌タイム
「にしても、エプロンとはな」
誕生日にはしゃぎ疲れた千鶴ちゃんをベッドに寝かしつけてから晩酌をしていると、そんなことを言ってくる先生。
「しかも、買い出しに行ったのはプレゼント本体じゃなくて、ラッピングの道具なのは驚いたぞ」
「本当はお店で買おうと思ったんですが、市販だとあまりいいのがなくて。手作りの方が良さそうだったんです」
千鶴ちゃんのために可愛いデザインのものを探してはみたが、どれもピンとこなかったので、とりあえず自分で作ってみることにした。裁縫は得意だし、ミシンの扱いもわりと得意だったから直ぐに出来たが、肝心のラッピングを考えてなかったので、時間を貰って買いに行ったのだ。
「にしてもあんな包装の仕方、誰に教わったんだ?」
「お祖母ちゃんです。昔そういう仕事をしてた時期があったらしくて、海斗の誕生日プレゼントのお金がギリギリの時に、節約のために教わりました」
「随分多芸な祖母だな」
今にして思うと、祖母には色々教わってばかりだった。いつもわからないことや、疑問をすぐに答えてくれる、なんでも出来る人。母さんが亡くなってから俺や海斗を陰ながら支えてくれたお祖母ちゃん。
「本当は俺の子供の顔を見せてあげたかったですが・・・」
「・・・その言い方、やっぱりもう」
「ええ。大分前に亡くなってます」
歳なので仕方ないと割りきってはいる。葬式だってしたからわかってはいるが、それでも俺は、お祖母ちゃんに今の幸せを伝えたかった。
「・・・明日行くんだろ?ちゃんと報告しないとな」
「はい。ありがとうございます」
「なぁ、健斗。そういうのは、今後一切私には隠すな」
「そういうの?」
「お前の悲しそうな顔は見たくないんだよ」
そうして俺を、無理矢理抱き寄せて膝枕させると、先生は言った。
「私は欲張りなんだ。お前の全てを私のものにしたい。だから今後は私の前では強がるな。素直な気持ちを全部出せ」
「・・・本当に遥香さんは凄いです」
「当たり前だ。私はお前のことが大好きなんだ。だから全てを私のものにする」
そう言いながらも優しく撫でられて、俺は少しだけ涙ぐんでしまいながらも言った。
「・・・お祖母ちゃんにはいつも迷惑かけてました。だから、本当に今のこの幸せを伝えられないのが悔しいです」
「そうか」
「遥香さん・・・遥香さんは俺の前から消えないですよね?ずっと隣にいてくれますよね?」
「・・・もちろんだ。お前が死ぬまで側にいる。いや、死んでも必ず隣にいるさ」
その言葉に、俺は思わず泣きながら笑みを浮かべるが、先生はそんな俺の恥ずかしい姿を優しく見守ってくれるのだった。




