表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

188/813

177 プレゼントのチョイス

晩酌タイム


「にしても、エプロンとはな」


誕生日にはしゃぎ疲れた千鶴ちゃんをベッドに寝かしつけてから晩酌をしていると、そんなことを言ってくる先生。


「しかも、買い出しに行ったのはプレゼント本体じゃなくて、ラッピングの道具なのは驚いたぞ」

「本当はお店で買おうと思ったんですが、市販だとあまりいいのがなくて。手作りの方が良さそうだったんです」


千鶴ちゃんのために可愛いデザインのものを探してはみたが、どれもピンとこなかったので、とりあえず自分で作ってみることにした。裁縫は得意だし、ミシンの扱いもわりと得意だったから直ぐに出来たが、肝心のラッピングを考えてなかったので、時間を貰って買いに行ったのだ。


「にしてもあんな包装の仕方、誰に教わったんだ?」

「お祖母ちゃんです。昔そういう仕事をしてた時期があったらしくて、海斗の誕生日プレゼントのお金がギリギリの時に、節約のために教わりました」

「随分多芸な祖母だな」


今にして思うと、祖母には色々教わってばかりだった。いつもわからないことや、疑問をすぐに答えてくれる、なんでも出来る人。母さんが亡くなってから俺や海斗を陰ながら支えてくれたお祖母ちゃん。


「本当は俺の子供の顔を見せてあげたかったですが・・・」

「・・・その言い方、やっぱりもう」

「ええ。大分前に亡くなってます」


歳なので仕方ないと割りきってはいる。葬式だってしたからわかってはいるが、それでも俺は、お祖母ちゃんに今の幸せを伝えたかった。


「・・・明日行くんだろ?ちゃんと報告しないとな」

「はい。ありがとうございます」

「なぁ、健斗。そういうのは、今後一切私には隠すな」

「そういうの?」

「お前の悲しそうな顔は見たくないんだよ」


そうして俺を、無理矢理抱き寄せて膝枕させると、先生は言った。


「私は欲張りなんだ。お前の全てを私のものにしたい。だから今後は私の前では強がるな。素直な気持ちを全部出せ」

「・・・本当に遥香さんは凄いです」

「当たり前だ。私はお前のことが大好きなんだ。だから全てを私のものにする」


そう言いながらも優しく撫でられて、俺は少しだけ涙ぐんでしまいながらも言った。


「・・・お祖母ちゃんにはいつも迷惑かけてました。だから、本当に今のこの幸せを伝えられないのが悔しいです」

「そうか」

「遥香さん・・・遥香さんは俺の前から消えないですよね?ずっと隣にいてくれますよね?」

「・・・もちろんだ。お前が死ぬまで側にいる。いや、死んでも必ず隣にいるさ」


その言葉に、俺は思わず泣きながら笑みを浮かべるが、先生はそんな俺の恥ずかしい姿を優しく見守ってくれるのだった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ