175 準備のお出掛け
お出掛け
「じゃあ、すみません、少し出てきます」
その言葉に先生は、頷いてから言った。
「ああ、わかった。留守番は任せろ」
「おにいちゃん、いってらっしゃい」
「お願いします。うん、行ってくるね千鶴ちゃん」
千鶴ちゃんの頭を撫でてそう言う。本来なら、二人を残して出掛けることはしないが、何しろ今日は重要な日なので仕方ない。
「夕飯の買い物もしてきますが、何かリクエストありますか?」
「お前の料理ならどれでも美味いからな。私はなんでもいい」
「千鶴ちゃんは?」
「えっとね、しちゅーたべたい」
「わかったよ。ご飯にかけるのでいいんだよね?」
「うん!」
あんまり品は良くないが、甘めのシチューをご飯にかけて食べるのが、千鶴ちゃん的にはお気に召したようだ。カレーみたいなものだと考えれば、納得する人もいるだろう。
「あ、おやつは冷蔵庫にプリン作ってますから、食べてください」
「ぷりん!やったー!」
「わかった。というか、心配しすぎだ。そんなに不安か?」
「いえ、すみません。少し心配性なだけです」
お休みの先生に千鶴ちゃんの世話と留守番を任せるのは、凄く心苦しい。本来なら俺の仕事なのだ。とはいえ、これから千鶴ちゃんのプレゼントを選びに行くのに、本人を連れていくわけにはいかないからなぁ。
「ま、気持ちはわかるがな」
先生は、既にプレゼントを買っているようだった。というか、俺が前からリサーチした情報を渡して、プレゼントが被らないようにしたので、100%被ることはないだろう。
「折角だ。たまには私達のことは気にせずにぶらぶらしてくるといい」
「それは嫌です」
「ま、そう言うとは思ったよ」
二人のことを忘れて何かをするなんてしたくない。二人のために何かしたい俺は、真逆のことは嘘でも言えないのだ。そんな俺の我が儘に、先生は頷いてから言った。
「なら、言い方を変えよう。私は久しぶりにちーちゃんと二人きりになりたいから、ゆっくり帰ってこい」
「・・・本当に遥香さんはズルいですね」
そんなことを言われたら、納得するしかない。たまには、母親と娘の親子の時間も必要なのだろう。
「ただし、私とちーちゃんが心配するから、真っ直ぐ帰ることいいな」
「ええ、わかってます」
千鶴ちゃんの頭をもう一度撫でてから、今度こそ俺は家を出る。夕飯の買い物の前にいくつか寄ってからになるが、それでも買うものはある程度決めている。あとはそれをどうにかして千鶴ちゃんに見つからないように、隠しておかなければならないだろうが、まあ、問題はないだろう。
そうして俺は、準備のために出掛けるのだった。
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