表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

180/813

171 夏祭りの前に

浴衣

「これでよしかな」


先生の家に住み初めてから、少し経った日のこと。俺は千鶴ちゃんの浴衣を着せていた。浴衣の着付けなんかは、お祖母ちゃんに習っていたのでなんとかなったが、可愛いピンクの浴衣を着た千鶴ちゃんは、身内の目から見ても可愛いものだ。


「おにいちゃん、どうかな?」

「うん、とっても似合ってるよ。可愛いよ」

「えへへ・・・」


嬉しそうに微笑む千鶴ちゃん。今日はこれから保育園近くで、小さな夏祭りがあるのだ。少ないが花火も見られるし、せっかくなので行くことになったのだ。しかし、浴衣の着付けを先生は出来なかったので、代わりに俺がやることにした。


「健斗、終わったなら私もやってくれ」

「はい、わかってます」


そして、今日は先生も浴衣だ。というか、まさか先生の着付けまですることになるとは思わなかったが、黒の浴衣の先生は、えらく色っぽく見えてしまう。俺はなんとか平静を保って着付けを終えるが、先生は見透かしたように聞いてきた。


「似合ってるか?」

「・・・凄く似合ってます」

「ならよしだな。浴衣なんて子供の頃以来だが・・・しかしまさかお前が大人用の浴衣まで持っているとはな」


その言葉に、俺は少しだけ気まずそうに言った。


「えっと、実はこれ父さんが母さんに贈ったものらしいんですが・・・その、母さんは結局これを着ることはできなくて、それで大切に取ってたのを貰ったんです」

「結構いいものだが・・・いいのか?」

「父さんもわかってて買ったので大丈夫です。それより今更ですが、そんな浴衣で大丈夫ですか?」

「本当に今更だが、構わないさ。それにこれは巽家の女が着るものだろ?」


その言葉に俺が頷くと、先生は微笑んで言った。


「ならこれを着る資格が私にはあるってことだ」


そう言いながら、千鶴ちゃんの頭を撫でる先生。


「ちーちゃんもよく似合ってるぞ」

「えへへ・・・うん!ままもかわいい」

「ありがとな。健斗としては私の浴衣は可愛いか?」

「・・・そんなの当たり前です」


こうして浴衣姿の先生を前に平静を保つのはなかなか大変だが、なんとか耐える。隣の千鶴ちゃんが唯一の癒しなので、そちらに視線を向けるが、なんとなくそちらに視線を向けていると、少しだけ嫉妬じみた視線がこちらにくるので、自然と俺は先生に視線を戻していた。


「ま、とりあえず着付けは終わったし行くか。健斗は着替えなくていいのか?」

「俺は浴衣ないですから。それに二人を着付けて満足です」

「ん、なら行くか」


そうして俺は浴衣姿の二人と共に会場へと向かうのだった。途中二人の浴衣姿が人目を惹いたのは言うまでもないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ