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18 三択の敗者

敗者という名の勝ち組かな?



「ただいまー」

「・・・まま!」


玄関から聞こえてくるその声と同時に部屋から飛び出したであろう千鶴ちゃんと先生がじゃれあう音が聞こえてくるのを耳にしながら俺は調理を続ける。


ご飯は炊けたしあとはハンバーグを焼くだけだと思っていると後ろから目を隠される。


「だーれだ?」

「遥香さん・・・調理中にその手の遊びは危ないですよ?」

「お、私だと一発でわかったか」

「千鶴ちゃんがここまで手が届くわけないですしね」


ほとんど選択肢一つなのでそう言うと先生は「確かに」と楽しげに笑った。

何やら上機嫌に見える先生は俺の手元を見て嬉しそうに微笑んだ。


「お、今日はハンバーグか。ちーちゃんの大好物なんだよな」

「あ、やっぱりそうでしたか」

「ん?お前に話したっけ?」

「今日の夕飯のリクエストを聞いたときにそれらしい反応をしてたので察しました」


昨日、今日と合わせて初めて見た千鶴ちゃんのキラキラした視線だったので忘れられる訳がなかった。そんな俺の言葉に先生は少しだけ意外そうな表情をしてからニヤリと笑って言った。


「少しは仲良くなれたのか?」

「まだまだ道は遠いですけど・・・多分近くはなりはじめてます」

「そっか・・・でもちーちゃんに手を出したら容赦しないからそれだけは覚えておけよ?」

「もちろんです。ところで遥香さんはハンバーグがお好きですか?」

「ん、まあ好きだな」

「俺とハンバーグとちーちゃんの三択だと?」

「ちーちゃん一択に決まってるだろ?」


分かりきってはいたが微妙に傷つく。


「じゃあ、敗者の俺は同じく敗者のハンバーグと傷を舐めあいますよ」

「食べ物と意志疎通するなよ」

「いずれ遥香さんに食べられる者同士ですから」


そう言うと先生は悪戯っぽい笑みで言った。


「なら、食後のデザートにでも食べるか」

「マジっすか?でしたらシャワー貸してください!」

「嘘だよ」

「おぅ・・・マジっすか・・・」


思わずうなだれてしまう。せっかく大人の階段を登れると思ったのに・・・そんな微妙な下心を見透かしたように先生は俺の頭に手をおいてから言った。


「プラトニックな関係は嫌いか?」

「大好物ですが、思春期なので興味はあります」

「正直な奴だな・・・ま、お前がちーちゃんに好かれたらいずれはするだろう」

「先は長いですね」


そう言うと先生はふいに俺の耳に顔を寄せてーーー


「はむ」


ーーーそのまま何故か耳を甘噛みされた。

想定外の事態に目を見開いていると先生は俺に背を向けて言った。


「今日はこれで我慢しろなー」


・・・食べるの意味合いが物理だった件について。なんとなくキスより先に耳を甘噛みされるのを経験したのは思春期的にはなんとも言えないところだけど・・・まあ、うん、あれだ。先生はやはり手強いということだけよくわかった。


そんなことを思いつつ俺はさっさと夕飯を仕上げるのだった。







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