168 足跡がないなら
足跡
「ふふ、これはいいな」
今日撮った写真を先生に見せると、嬉しそうに微笑む先生。その先生に、俺は思いきって聞いてみた。
「それで聞きたいんですが、アルバムとかってあります?千鶴ちゃんの」
「すまんが、作ってないな」
「じゃあ、俺が作りますがいいですか?家族のアルバムも作ろうと思うんですが」
「ああ、もちろんだ」
許可を得たのでホッとしていると、先生は思い出したように聞いてきた。
「そういえば、お前の家に行った時に、アルバムらしきものがなかったが・・・どこかに隠してるのか?」
「海斗のやつならありますよ」
「お前のは?」
そう聞かれて、俺はなかったことを思い出したので、頷いて言った。
「そういえば作ってないですね」
「作ってないって・・・弟のはあって、お前のはないのか?」
「まあ、あまり必要性を感じなかったので」
それに俺が写真を撮るとなると、他に撮ってくれる人はいないので、仕方ない。そんな俺の言葉に先生は、少しだけため息まじりに言った。
「やっぱりお前には、私がいないとダメだな」
「そんなの当たり前です。遥香さんがいないと、俺はダメですから」
「そういう意味でもあるんだが・・・なあ、健斗。今朝あいつに何を言われたんだ?」
あいつとは多分、お義母さんのことだろう。少し考えてから、俺は素直に答えた。
「もう少し家族には甘えろと言われました。もっと我が儘になってもいいと。俺としては十分甘えてるつもりなんですが」
「たく、余計なところで気のまわる奴だが・・・まあ確かにその通りだな。お前は私に何か望むことはないのか?」
その言葉に深くは考えず、俺は言った。
「お側にいたいです。これから先もずっと」
「そんなの当然だろう。それ以外にはないのか?」
それ以外か・・・その言葉に今朝お義母さんから言われた言葉を思い出して、俺は少しだけ勇気を出して言ってみることにした。
「でしたら、その・・・もう少し早めに、こっちに引っ越してきてもいいですか?」
「そんなことでいいのか?」
「はい、あとできればその・・・腕枕をやってみたいんですが」
その言葉に、先生はきょとんとしてからくすりと笑って言った。
「本当にお前は変わってるな。そんなことを望むなんて」
「これでも精一杯の望みなんですがね」
「可愛すぎる望みだよ。腕枕じゃ済まなくなりそうだが、わかった。お前の好きなようにするといい」
「ありがとうございます」
そうと決まれば、早めに引っ越しの準備を済ませようと思うのだった。そんな俺のことを見ながら、先生が密かにデジカメのシャッターをきっていたことに、俺は気づかなかった。




