表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

175/813

166 置き土産と我が儘

アドバイス


「じゃあ、またくるわねー」


翌日、先生の出勤時間にあわせて、慌ただしく帰ることになったお義父さんとお義母さん。ここ数日でそこそこ慣れた千鶴ちゃんも見送る中で、俺は聞いた。


「本当に、駅まで見送りに行かなくていいんですか?」

「ああ、健斗くんにはここ数日、色々と迷惑をかけたからね。それに駅までは、遥香が付き添ってくれるからね」

「今度はこっちに遊びにきてねー、けんちゃん、ちーちゃん」

「ええ、もちろんです。ね、千鶴ちゃん」


俺の後ろでこくりと頷く千鶴ちゃん。祖父母とは、もう少し時間が必要なようだ。


「ま、私が駅までは案内するから、お前はちーちゃんのことを頼んだ」

「ええ、もちろんです」

「じゃあ、いくぞ」


そう言ってから出ていく前に、お義母さんは何かを思い出したように俺に近づいてきてから、笑って言った。


「あのね、けんちゃんのこと、私達は認めるのよー。でも、大切な家族には、もう少し我が儘になってもいいのよー。遥香ちゃんもちーちゃんも、けんちゃんのこと大好きだからねぇ」


予想外の台詞に思わず驚いてから、俺は苦笑して言った。


「これでもかなり我が儘なんですがね」

「だったら、けんちゃんは甘え下手なのねぇ。遥香ちゃんは、けんちゃんが我が儘言うのを多分待ってるから、たまには甘えさせるだけじゃなくて、甘えてみるのもいいと思うわよー。無理しないのも、夫婦円満の秘訣だから♪」

「・・・肝に命じておきます」

「よろしい」


そう言ってからお義母さんは、待っている先生とお義父さんの元へと駆けて行った。それを見送りながら、俺は少しだけ考えてしまう。これでもかなり俺は我が儘を言ってるはずなんだが・・・少なくともお義母さんからそう見えたらしい。


(甘えるか・・・どうすればいいんだろ?)


家族のために頑張ることが基本の俺にとって、誰かに甘えるのは、はっきり言って苦手な分野かもしれない。千鶴ちゃんや先生を甘やかせるのは、凄く好きだし楽しいけど、自分から同じ事を頼むのは、確かに少しだけ迷ってしまう。先生は疲れてるだろうし、無理はさせたくないのだ。


「おにいちゃん、だいじょうぶ?」


そんなことを考えていたら、千鶴ちゃんが心配そうにこちらを見ていたので、俺はそれに思考を切り替えてから、千鶴ちゃんの頭を撫でて言った。


「大丈夫だよ。ありがとう千鶴ちゃん」

「ふにゃぁ・・・」


頭を撫でると、可愛い声を出す千鶴ちゃんに癒されながら、俺はお義母さんの残していった言葉を考えつつ、日々の日常に戻るのだった。まあ、それはそれ、これはこれ、まずは千鶴ちゃんと先生のために頑張らないとね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ