158.5 好感度爆上がり
先んじて
「なんだい、改まって話って」
健斗が帰ってから、寝ようとする二人を起こしてから遥香は先んじて説明することにした。
「健斗の親について説明を忘れていたからな」
「ご両親?そういえば、聞いてないわねー」
「・・・何か訳ありなのかな?」
本当なら健斗の口から告げるべき・・・いや、事前に遥香が話しておくべきことだったが、健斗とのことをあまり話したくなかったのと、タイミングを逃したことで、夕飯の時に健斗にあんな顔をさせたのだと、反省しながら遥香は言葉を発した。
「健斗は父子家庭だ」
「・・・母親は?」
「健斗が幼い頃に亡くなってる」
その言葉に霞が少しだけ悲しげに顔を歪めたのに対して、暁斗は少しだけ納得したように頷いて言った。
「なるほど、だからあそこまでしっかりしていたのか。他に家族は?」
「弟がいるだけだ」
「そうか・・・あの年でここまで落ち着いていて、色々と家庭的なのは少しだけ不自然だと思ってたが、納得したよ」
そう、頷いてから暁斗は少しだけ考えてから聞いた。
「健斗くんが精神を病んでたりすることはないかな?またはその予兆があったりとか」
「あなた、そんな言い方・・・」
「霞、和也くんのことを忘れてはいないね。彼が豹変したように健斗くんがこの先変わらない保証はない」
その言葉に遥香は暁斗の胸ぐらを掴んでから視線を鋭くして言った。
「例え冗談でも、そんなことを聞くことは許さない」
「・・・和也くんで懲りてないのか?彼だって同じことになるとは考えないのか?」
「かもしれないな。だったらどうした」
そう言ってから遥香は真っ直ぐに言葉を紡いでいく。
「私は和也との結婚を後悔してない。ちーちゃんを辛い目にあわせて、和也を不幸にしたのは私だ。でも、健斗は・・・こんな私を、ちーちゃんを愛してると言ってくれたんだ。下心もなしに毎日、私やちーちゃんのために飯を作って微笑んでくれた。ちーちゃんの顔を見なかったのか?もしそれで健斗を侮辱するなら親でも許すつもりはない」
あまりの凄みに暁斗は少しだけポカーンとしてからくすりと笑って言った。
「すまないね。疑ってたわけではないよ。ただ、一応聞きたかったんだ。一度和也くんを失ってからこうしてまた、健斗くんと結婚する。同じ思いをするかもしれないから、親として心配になったんだけど・・・余計なお世話だったみたいだね」
「そうそう、あなたったらもうー!けんちゃんがいい子なのも、けんちゃんが、遥香ちゃんとちーちゃんにベタ惚れなのも知っててそういうこと言うんだからー」
そう言いながら暁斗を攻めてから霞は遥香に言った。
「遥香ちゃん。けんちゃんが例えどんな家庭環境でも、私達は気にしないわよ。なんたってあなたとちーちゃんの顔をみたら、けんちゃんが凄くいい子なのはわかるから」
「ああ、失礼なことを言ってすまなかったね」
「・・・先に言っておくが、健斗に何かあれば許さないからな。これ以上あいつを苦しめたくはないんだ」
過去のことで健斗はまだ己を完全には許していないはずだ。だからこそ、健斗は自分が守ってみせると決めているのだ。そんな遥香の言葉に暁斗は苦笑してから言った。
「心配しなくてもいいよ。むしろ健斗くんには好感を抱いているんだ。面倒な私の娘を貰ってくれるんだからね」
「ふふふ、これから孫が増えるのは嬉しいわぁー!」
「はぁ・・・とにかく、この話はちーちゃんには内緒にしてくれ。あと、健斗をあまり困らせるなよ」
「ふふ、娘婿との交流楽しみだわ♪」
あまり聞いてない母親にため息を洩らしてから遥香はその場を後にする。そんな娘を見てから夫婦が嬉そうに微笑みあいつつ・・・どうにかして健斗を確保しておこうと思ったのを説明する必要はないだろう。




