158 親子の晩酌
晩酌タイム
「遥香とこうして酒を飲むのは、久しぶりだな」
お義母さんにお酌されてから日本酒を飲むお義父さん。遥香さんはいつも通りビールで俺とお義母さんは普通にジュースを飲んでいる。千鶴ちゃんを寝かしつけてからおつまみを用意してこうして晩酌をしているのだが、遥香さんは少しだけ不機嫌そうに言った。
「いいけど、飲み過ぎはやめてくれ。ちーちゃんが寝てるから」
「飲み過ぎすると不味いのですか?」
「ああ。酒癖があまり良くないからな」
少しだけ驚きながらお義父さんを見ると、苦笑して言った。
「心配しなくてもそこまで飲まないよ。流石に今日は控えるさ」
「お義父さんお酒弱いんですか?」
「ふふ、仕事で嫌なことがあったら、凄く飲むわよー。そして私に甘えるの」
「ああ、やっぱり・・・親子なんですね」
先生も仕事で嫌なことがあったら酒の量が少しだけ増えるので、思わずそう言ってから、俺はお義母さんに聞いていた。
「お二人はどんな馴れ初めなんですか?」
「あらけんちゃん、私達の馴れ初めなんて知りたいの?」
「他人の恋話は好きなので」
「変わってるわねぇ・・・まあ、簡単に言えば幼なじみよ」
「幼なじみ・・・」
まさか、ここまで遺伝しているとは思わなかったが、お義母さんは気にせずに答えた。
「私がこの人のこと好きで告白したんだけどねー。それから娘達産んでもラブラブなのよー」
「霞、あまり恥ずかしいことを言わないでくれ」
「あら?照れてるの?可愛いわねぇ」
なんとなく知ってるやり取りに遺伝を感じつつ、俺は思い出したように聞いた。
「そういえば、お二人は俺が来月からこの家に住むことはご存知なんですか?」
「あら?そうなの?」
「聞いてはいなかったんですね。今更ですがよろしいでしょうか?」
そう聞くと、お義母さんはあっさりと頷いて言った。
「もちろんよー。けんちゃんになら任せられるわ。この子ったら生活力ゼロだから」
「ほっとけ」
そう呟く遥香さんに、俺はお酌してからお義父さんを見ると、お義父さんは苦笑しながら言った。
「初耳だが、健斗くんのご両親が納得してるなら構わないよ」
「それは大丈夫です」
「ふふ、けんちゃんみたいな素敵な息子を持って、お母さんも幸せなんじゃないかしらー」
「・・・だと嬉しいです」
咄嗟に説明することが出来ずにそう答えると遥香さんが心配そうにこちらを見ていたので微笑んで大丈夫と頷いた。まあ、こればっかりは明日にでも改めて説明しようと思ったのだった。流石にこの楽しい時間を暗い話で埋めたくないしね。




