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156 あわあわ

あわあわ♪

「あわあわ、しゅわしゅわ♪」


お風呂に入ってから入浴剤を入れて嬉しそうにお湯に溶けていくのを見守る千鶴ちゃん。こんな小さいことで喜んでくれることに嬉しく思いながら俺は千鶴ちゃんに言った。


「今度は大きなお風呂にいくのもいいかもね」

「おっきなおふろ?」

「そう。色んな人が入れる大きなお風呂だよ」


銭湯や温泉を知らない千鶴ちゃんにそう説明すると千鶴ちゃんは笑顔で言った。


「ちー、おにいちゃんとままとおっきなおふろはいりたい!」

「一緒は少しだけ難しいかな」

「なんで?」


無垢な瞳を向けてくるので俺はそれになんとか答えた。


「えっと、大きくなると女の子は好きな人以外とはお風呂に入っちゃダメだからだよ」

「そうなの?」

「女の子同士ならいいけど、男の子とは好きな人としかダメなんだよ」

「ぷーるも?」

「場合によるかな」


中学、高校でプールの授業が別にあることなんて当たり前なので思わずそう答える。俺の言葉に少しだけしゅんとした千鶴ちゃんに俺はなんとか言葉を続ける。


「でも、もしかしたら大きなお風呂に3人で入れるかもしれないよ」

「ほんと?」

「うん。家族で入れるところもあるから」


混浴とかについては黙っておこう。そんな俺の言葉に、ぱぁと顔を明るくさせてから千鶴ちゃんは言った。


「じゃあ、やくそく!」

「うん、約束約束」


指切りをすることがここ最近増えたように感じる。何かあるたびに千鶴ちゃんと小さな約束をするのだ。それがとても嬉しく感じながらこの信頼を裏切りたくないと思うのだった。


「ねえねえ、おにいちゃん」

「なんだい?」

「きょうもいっしょにねてくれる?」

「もちろんだよ」


その言葉に嬉しそうに微笑む千鶴ちゃん。お義父さんやお義母さんにいきなりあって不安なのだろう。二人が悪いわけでも千鶴ちゃんのせいでもないが、こればっかりは時間の解決しかないのだ。だから俺が千鶴ちゃんの心を守る。少しでもこの子が幸せになれるように手助けするのだ。


「ねえねえ、おにいちゃん」

「ん?何かな?」

「あのね・・・おにいちゃんはずっとちーのことみててくれる?」

「うん。もちろんだよ」


いつかは嫁にいってしまうので少しだけ嘘にはなるが、それでも俺は千鶴ちゃんの幸せを願っている。だから親としてずっと千鶴ちゃんを見守ろうと決意するのだった。まあ、千鶴ちゃんが誰かに惚れるのは複雑ではあるが、親としてきちんと幸せになれるなら何も言わないだろう。そんな俺の内心を知らない千鶴ちゃんは嬉しそうに入浴剤の泡を楽しむのだった。





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