16 はじめてのお迎え
ちーちゃんとの距離感が難しい(^_^;)
先生と話してから仕事が残ってる先生の代わりに俺は千鶴ちゃんを迎えにきていた。制服姿のお迎えは不審がられるかと思っていたが、意外と違和感を抱かれないまま俺は昨日会った千鶴ちゃんの先生に会った。
「あ、昨日の千鶴ちゃんのお兄さんですね」
「こんにちは。千鶴ちゃん迎えにきたんですが・・・」
「はいはい、呼んできますねー」
お兄ちゃんではなく父親候補なんですと心の中でツッコミつつ保育園の先生が千鶴ちゃんを連れてくるのを待つ。昨日よりも時間が早いためかまだ何人かの園児が残っているみたいだが外には千鶴ちゃんの姿はなかった。そうなると室内で遊んでいるのだろうか?そんなことを考えていると何人かの園児が何故か俺に近寄ってきた。なんで?
「ねえねえ、おにいさん。おにいさんはちづるちゃんのおにいちゃんなの?」
「そう言う君たちは千鶴ちゃんのお友達かな?」
「うん!でもちづるちゃんあんまりおそとであそんでくれないの」
「そうなんだ」
ちゃんと友達がいることに少なからず安堵する。やはり千鶴ちゃんは別にコミュ障なのではなく単に大人が苦手なだけなのだろうと思っていると園児の一人が言った。
「おにいさん、こんどちづるちゃんのいえにあそびにいってもいい?」
「それは直接千鶴ちゃんに聞いてみたらどうかな?」
俺が勝手に許可を出せることではないのでそう言うとその子は口を尖らせて言った。
「だって、ちづるちゃんなんどきいてもだめだって」
「ねー、ちづるちゃんいえにあそびにいくのはだめだっていうよねー」
「ねー」と声を揃えるその子達。しかし、家に人を呼ばないか・・・確かに家に呼べるような状態ではないがなんとなく家が片付いてないだけの理由ではないような気がした。
友達を家に呼ばない理由はいくつかある。
見せられる状態ではないとか、他人を呼ぶのが嫌いとか、あるいはそう・・・呼べない事情があるとか、そんなところだろうか?
まあ、あくまで推察にすぎないので勘違いの可能性も否定できないが今は些細なことでも千鶴ちゃんの情報が欲しいのだ。
しばらく園児達と話してからその子達は飽きたのか俺の前から姿を消したと同時に待ち人はきた。
「千鶴ちゃん帰ろっか」
「・・・うん」
連れてきてくれた先生に挨拶をしてから俺と千鶴ちゃんは歩いて帰る。本当は手を繋いだり抱っこしたりしてみたいが・・・下手すれば通報とかされそうなので千鶴ちゃんの歩みに合わせて歩く。
「保育園は楽しい?」
「・・・・うん」
「今日は何してたの?」
「・・・・えほんよんでた」
「本が好きなんだね」
「・・・・うん」
・・・うん、わかっていたけど会話が全然膨らまない。まあ、俺のコミュ力が低いのも原因のひとつだけど、まだまだ警戒されているのだろうと少し悲しくなる。まあ、これから頑張って関係を構築するしかないだろうと俺は気を引き締める。