124 お土産タイム
とりあえずお土産
「えへへ、おにいちゃん」
一瞬だけシャワーを浴びさせてもらってから、居間に戻ると嬉しそうにこちらに近づいてくる千鶴ちゃん。抱き上げるとさらに嬉しそうに笑みを浮かべるのでこちらまで幸せになるが、流石にそろそろ寝かしつけないと若い時の睡眠不足は後々響いてくるしね。
「健斗くん。私もちーちゃんの添い寝しようか?」
「いえ、流石に瑠美さんと一緒には出来ませんよ」
二人で千鶴ちゃんを寝かしつけたなんて知ったら先生が嫉妬しそうだしね。
「瑠美さんは申し訳ないですが後で千鶴ちゃんが寝たら一緒のベッドで寝てください。三人でも余裕ですからね。それか客用の布団出しましょうか?」
「いや、同じベッドでいいよー。にしても姉さんとも寝たことあるんだ」
「まあ、寝かしつけるのは俺と遥香さんの仕事ですから」
その言葉にニヤリと笑ってから瑠美さんは聞いてきた。
「仲睦まじいねぇ。それで?健斗くんは旅行は満喫できたの?」
「ええ、お陰様で。あ、そうそう」
俺は千鶴ちゃんを片手で抱っこしたまま旅行鞄から瑠美さん用のお土産を取り出してから渡す。
「瑠美さん、4日間ありがとうございました。ささやかですかお土産です」
「あらあら、ありがとう。にしても健斗くん意外と力あるんだね」
「そうですか?」
「ちーちゃんを片手で抱き上げてそれをずっと維持するのはなかなか至難の業じゃない?」
「昔から鍛えてますから。それにこうして家事をするかもしれない想定もしてましたから」
そう言いながら千鶴ちゃんにもお土産のカワウソのぬいぐるみを渡す。
「はい。これは千鶴ちゃんの分だよ。4日間瑠美おばさんの言うことをいい子で聞いたんだってね。えらいよ」
「わぁ・・・おにいちゃん、ありがとう!」
「どういたしまして」
そうして千鶴ちゃんが喜ぶ姿を見て満足していると瑠美さんは微笑ましげに言った。
「本当にいい顔で笑うようになったね」
「そうなんですか?」
「うん、私と一緒の4日間では見られない笑顔だよ。にしてもそのぬいぐるみ・・・もしかして上野動物園も寄ったの?」
「ええ、家族旅行の下見も兼ねてですが」
その言葉に瑠美さんは少しだけ苦笑して言った。
「本当に健斗くんはマメだねぇ。うちの旦那にもこれくらいの器量が欲しいものだよ」
「これくらいしか俺には出来ないので」
「しかも謙虚ときた。本当に姉さんは凄い逸材を見つけたものだ」
そんな会話をしているが、俺に抱っこされた千鶴ちゃんはご機嫌でカワウソのぬいぐるみを抱き締めていたのだった。




