120 修学旅行最終日
最終日
「いよいよ今日帰るのか・・・やっとだな」
眠そうに納豆をかき混ぜながらそう呟く雅人。朝御飯を食べつつ俺は言った。
「意外と長かったよね」
「でござるな」
「お前ら冷めてるなぁ・・・」
そう言いながら一足先にご飯を終えて片付けに行った吉崎をスルーすると、雅人が聞いてきた。
「今日は残りの時間どうするんだ?」
「上野動物園に行こうかなって思ってる」
「拙者は秋葉で同人誌漁りでござる」
「お前ららしいな」
「雅人はどうするの?」
「俺は時間までホテルで寝てるさ」
ある意味今日は一番の自由行動日だ。個人行動が許されているが帰るまでには間に合うように新宿駅に集合になっている。都会の交通機関に慣れる意味でも生徒の土地勘を養うためにもそういう措置が取り計られたという話を先輩からは聞いたことがある。
まあ、どれだけ土地勘がなくても調べてあるのでわりと簡単に集合場所に辿り着けるだろうけど、万が一に備えて自信がない生徒のためにホテルのチェックアウト後に教員が付き添って目的地まで行くという手段も講じられている。恐らく雅人も面倒なので教師に付いていくのだろう。
「雅人らしいね」
「けんちゃんは上野動物園ってことはパンダを見に行くでござるか?」
「いや、カワウソとミーアキャットを見に行こうかと」
「他の動物園でも見れそうでござるが・・・」
「好きなんだよ」
千鶴ちゃんが。その言葉の意味に気付いたのか頷いて言った。
「なるほど。最後までけんちゃんは親でござるな」
「というか、今日は一緒に行くのか?」
先生のことだとわかったので俺は少しだけ苦笑して言った。
「誘ってはみたけど、どうだろうね」
「一人で動物園はなかなかシュールだぞ?」
「まあ、何事も経験だからね」
先生は忙しいだろうし間に合えば合流するとは言っていたけど、望みは薄いだろう。まあ、折角だから写真をいっぱい撮ってからお土産にカワウソの人形でも買ってこようと思っていると、斉藤が思い出したように聞いてきた。
「そうだ、けんちゃんは同人誌に興味ないでござるか?」
「同人誌?」
「エロいやつか?」
「健全な奴でござるよ」
俺も一瞬そっちかと思った。
「まあ、店に出回っているのはほんの一部でござるから、拙者としてはあまりオススメはしないでござるが、是非とも最後の夏くらいは友人にも趣味を分かって欲しいのでござる」
「具体的にはどういうものなの?」
「二次創作や、オリジナルで色んな同人誌があるでござる。拙者としては是非とも百合の同人誌をオススメしたいでござる」
そんな他愛ない話しながら朝御飯を食べるのだった。




