119 約束と確認
ちゃっかり約束
「お疲れ様です遥香さん」
夜、人目を避けて先生の部屋に着いてからくつろぐ先生にそう言うと微笑んで言った。
「ああ。まったくヤンチャな生徒が多くて大変だが、シーの方ではもっと大変だったらしいからな。吉崎はまた反省文だ。あいつ本当に卒業できるんだか」
「ご迷惑をおかけします」
やっぱり友人は選ぶべきだったと心底思う。
「ま、それはいいんだが・・・明日には修学旅行も終わりだな。楽しめたのか?」
「ええ。もちろん」
「そのわりには旅行中も私やちーちゃんのことばかり気にしていたろ?」
「家族ですから」
当然のことにそう言うと先生はくすりと笑って言った。
「家族か・・・そうだな。私が電話した時もちーちゃんはお前のことを嬉しそうに報告してくれたよ」
「タイミング的にそうなったんでしょうね」
「ま、そうだろうがな」
そう笑う先生に俺は思い出したように言った。
「遥香さん。明後日の土曜日少しだけ時間貰えますか?」
「構わないが、午前中は仕事だぞ?」
「はい。午後に合流しましょう。俺は修学旅行分の家事の前に千鶴ちゃんと遊びたいので」
「何の用事かわからないが、わかったよ」
「お願いします。あとお聞きしたいんですが・・・ご両親にはいつご挨拶に行けばいいですか?」
その言葉に先生は一瞬動きを止めてから少しだけ気まずそうに聞いてきた。
「・・・挨拶に行きたいのか?」
「はい。何かダメですか?」
「いや、ダメではないが・・・結構個性的だから健斗がひかないか少しだけ心配でな」
「心配しなくてもどんな家族でもちゃんと受け入れますから」
少なくともうちの父親を越える存在には出会わないだろうと思ったからだ。
「そうか・・・なら、その件もまた相談だな」
「はい。あ、そうそう。それとこの際聞きたいんですが、いつ書きますか?」
「何をだ?」
「婚姻届・・・いや、再婚だから入籍届ですかね」
確か再婚や離婚して名字が変わる必要がある時には入籍届になると聞いたことがある。色々難しいが、先生と千鶴ちゃんが俺と正式に家族になるには必要なことだからだ。
「それはもう用意してある。私の欄だけは埋めてあるから後はお前とお前の父親の記入があれば卒業してからすぐに出せるだろう」
「用意いいですね」
「言ったろ?私も本気だって。重いか?」
「いえ、嬉しいです」
まあ、実際には卒業式のある3月までは出せないが4月になって年度が変われば俺は晴れて先生と結婚しても問題なくなる。それまでに出来ることをして過ごそうと思うのだった。




