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106 旅の晩酌

恒例の晩酌旅行バージョン



「お、玉子焼きか」


見回りが終わった先生が冷蔵庫で冷やしていたビールを持ってきたので昼間見つけて買っておいたものを取り出すと先生は嬉しそうに反応してくれた。


「有名だと聞いたので買っておいたんです」

「まあ、らしいな」

「あとは、俺が準備してきたのも一応あるのですが・・・」

「なら、そっちがいい」


その言葉に驚くと先生は微笑んで言った。


「私が好きなのはお前の料理だからな。市販品なんかよりもそっちの味が好みだ」

「嬉しいですけど・・・料理だけですか?」

「無論お前のことも好きだよ」


そう笑う先生は珍しくビールをそのまま飲むとポツリと言った。


「薄情な親だよな。最初こそちーちゃんのことを気にしてたのにいざお前と二人きりになると楽しんじゃうんだから」

「薄情なんかじゃありませんよ。遥香さんは千鶴ちゃんのことを大切に思ってるからそういう考え方ができるんです」

「私よりお前の方が心配してるように思えるが?」

「否定はしません」


確かに心配なのは確かだけどそれでも俺は先生に言った。


「でも、遥香さんとの修学旅行は今年で最後ですから」

「修学旅行は一度しかないだろ?」

「ええ。まあ、ハッキリ言うと生徒と教師の関係で出掛けるのはこれが最後かもしれませんから、なら割りきって千鶴ちゃんが留守番してくれてることに感謝して楽しもうと思うんです」


まあ、それでも心配な気持ちが消えるわけではないし、なんならこれからすぐに先生と共に帰りたいくらいだけど、皆の好意を無駄にしたくないので俺はそう前向きにとらえる。


「まあ、帰ったら千鶴ちゃんを存分に愛でましょう」

「そうだな。もうじき夏休みだし遠出をするか」

「いいですね。どこ行きますか?」

「ちーちゃんが行きたいところと部屋に露天がついてるところだな。今度は三人で入るぞ」

「それもいいですね」


千鶴ちゃんの前でならあまり悪戯はしてこないだろうと思っていると先生はニヤリと笑って言った。


「折角だからな、ちーちゃんにもお前の筋肉を触ってもらうか」

「やめてください。恥ずかしい」

「冗談だ。まあ、私としてもお前の身体を安売りするつもりはないがな」

「なら良かったです」


そうして笑うといつもの先生に戻ったようなので一安心する。やっぱり先生には笑顔がよく似合う。いつも先生は色んなものを抱え込もうとするので、その負担を少しでも減らしたいのだ。俺なんかではあまり肩代わりできないかもしれないが、側で笑顔にすることくらいは出来ると思いたい。そうして先生と晩酌をいつものように楽しむのだった。




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