99 流れ作業
ダイジェスト
一日目、初日は移動してから国会議事堂の見学と築地場外市場での昼食。そして午後は劇を見て終了になる。
「思うけど、このスケジュールってわりとハードだよな」
「まあ、初日にやるべきことを詰め込んだらそうなるでしょ」
バスでの移動中にそんなことを話す。隣の席の雅人は面倒そうにスマホをいじってからため息をつくが、俺はそんなことよりも昼御飯のことを思い出していた。
「海鮮丼美味しかったね。お土産買ったけど、今度はゆっくり回りたいよ」
「本当にお前は楽しんでたよな。海鮮丼なんて北海道の方が美味いんじゃないのか?」
「今度比較してみたいところだよ。雅人はあんまり乗り気じゃなかったよね」
「まあな。確かに美味しそうなものは多かったがお前ほど熱心にはなれない」
今度は千鶴ちゃんと先生と三人で来たいものだ。ちなみに先生は引率だからあまり長時間は一緒にはいられなかったけど、俺がマークしていたものをさりげなく買ってくれたりと無言のコミュニケーションはとれた。後できちんとお礼を言いたいものだ。
「ま、でも良かったよ」
「何が?」
「お前が思ったより落ち着いてて。今朝なんて不安そうしてるのが一目でわかるほどだったからな」
千鶴ちゃんのことを心配するあまり確かにそわそわしていたのは確かだ。先生も少しだけそんな様子を見せていたのに気付いたのは多分俺だけだろう。
「まあ、せっかくなら家族旅行の下見にしようと決めたからね」
「家族想いなことだ」
騒がしいバスの中とはいえ、誰が聞いてるかわからないのでこうしてオブラートに会話をする。
「まあなんにしても今日はこれで旅館に着いたら一日目は終わりだな」
「ようやくだね。露天風呂とかあるんだっけ?」
「ああ。そういえば気をつけた方がいいかもしれないな」
「何を?」
そう聞くと雅人はこっそりと声を潜めて言った。
「旅館は貸し切り。入浴時間が別となると吉崎みたいな馬鹿はマジで覗きとかしかねないからな」
「いやいや、流石にそんな漫画みたいな展開はないでしょ」
「だといいがな。何にしても用心に越したことはないだろ」
そう言われたので後ろの席の斉藤と吉崎をチラリと見ると、何やらやる気満々な吉崎と苦笑している斉藤の姿があったので、俺は少しだけ不安になりつつも、雅人のアドバイスを聞こうかという気持ちになっていた。クラスメイトの女子だけならまだしも教員の時間を狙って先生を覗くようなら遠慮しないで殴ろうと決めたのだった。先生の肌は俺が守る。




