97 しばしの別れ
いってらっしゃい
「じゃあ、行ってきます」
三泊四日分の荷物を持ってから先生の家に一度立ち寄って挨拶をする。まだ寝てる千鶴ちゃんを起こすことはせずに起きてる瑠美さんに挨拶をすると瑠美さんは眠そうに言った。
「姉さんはもう学校行ったみたいだねー」
「教師ですからね。色々あるのでしょう」
当日いきなりの欠席はあまりないとは思うけど、そういう場合の対処など色々仕事もあるのだろう。タイミング的に今日はかち合えなかったのは残念だけど。
「私の作った朝ごはんに不満言ってたよ。健斗くんの方がいいって」
「それはまた、嬉しいですがすみません」
今日は朝ごはんは瑠美さんに頼んだというか、先生がそうしろと言ったので従ったが、やはり俺が作るべきだったかもしれないと少しだけ思う。いっそ今から千鶴ちゃんのご飯だけでも作ろうかと思っていると、瑠美さんは笑って言った。
「ま、心配なんもわかるけど、素直に楽しみなよ」
「はい。ありがとうございます」
「健斗くんがちーちゃんのこと大好きなのもわかるけど、これでも一応叔母さんだからね。それに子持ちだし子供の扱いは任せてよ」
「ええ、信用してます。それでもやっぱり離れるのが寂しいですね。これで嫁に行くときにはさらに寂しくなると思うと大変です」
この時期の子供が可愛いとは良く言うけど、本当に子供というのは可愛い。自分の子供でなくても無条件で可愛い上に自分の子供ならさらに可愛く思える。千鶴ちゃんと血は繋がってなくても本当に自分の娘のように可愛いと思える。
「健斗くんが頑固な親父にはならなそうだけど、意外と姉さんが反対しそうだよね」
「まあ、遥香さんも愛情深いですから」
「ん・・・おにいちゃん」
そんな風に話していると、パジャマ姿の千鶴ちゃんが眠そうに歩いてきた。真っ直ぐ俺のところまで歩いてくると千鶴ちゃんは寂しそうに言った。
「おにいちゃん。いっちゃうの?」
「ごめんね、千鶴ちゃん。なるべく早く帰るから、叔母さんと一緒に待っててね」
「・・・うん」
よしよしと頭を撫でると眠そうな目を細めて言った。
「ちー、いいこでるすばんするー」
「うん。千鶴ちゃんは偉い子だからね。信じてる」
「うん」
頷いてから瑠美さんと千鶴ちゃんを見て俺は言った。
「じゃあ、行ってきます」
後ろからいってらっしゃいの声が聞こえてくる。振り返りそうになるのを抑えて俺は集合時間の学校へと向かうのだった。三泊四日の旅がいよいよ始まる。なんとしても遥香さんと過ごせるように全力を尽くそうと決意するのだった。




