10 親の承認
苦手な方はご注意を・・・どうしても個性が欲しかったので(^_^;)
「ただいまー」
「あら?遅かったわね」
家に帰るとそんな口調で出迎えてくれる人が。声のトーンも高く女物の衣装も似合ってるその人に俺はため息をつきながら言った。
「家でまで女装する必要あるのか?父さん」
「ふふふ・・・健斗はわかってないわねー。オネェの道は普段の行いをコツコツ積み上げた先にあるのよ」
「それを理解しても俺はそっちの業界には入らないから問題ないな」
「つれないわねぇー」と笑う父さん。そう、俺の父親はオカマと呼ばれる種族に分類されるのだ。まあ、本人いわくオネェらしいけど、どっちでも俺からすれば一緒なので何も問題はないだろう。それにしても・・・
「父さん今日休みだったの?それなら言ってくれればいいのに」
「私もすっかり忘れてたのよ。お仕事好き過ぎるのも考えものよねー」
父さんはオネェのバーで働いているが、見た目も女にしか見えなくてかなり常連客からは人気らしい。不思議なことにこの人は女装してお客さんの相手をするのが楽しいらしく、まあ所謂仕事人間というやつだろうか?先生も教師という仕事を好きでやってるようなので俺からすれば二人とも尊敬できるのだが・・・この人の場合少し抜けているのが問題だろう。
「それで?帰りが遅かったけど何かあったの?」
「父さん・・・書き置き見てないの?」
俺と父さんはそもそも活動時間が違うので会えない時は書き置きを残して連絡を取っているのだが・・・父さんは机の上を見て俺の書き置きを今更読んでから微笑んだ。
「ふふ・・・ごめんなさいね。それで、健斗は花嫁修行にでも行ってたの?」
「ある意味間違ってないけど・・・うん、俺を永久就職させてくれる人のところに行ってたんだよ」
「そう・・・確かあなたの担任の先生よね?前に会った時は美人でバリバリ仕事出来ます!って感じの人だったけど・・・」
と、そこでそれまで穏やかに微笑んでいた父さんは少し真剣な表情で言った。
「父親として言うわね。あなたがその人に騙されているなら私は二人の結婚を認めないから」
珍しく真剣な表情の父さん。普段穏やかに微笑んでいる人なのでこういう時の表情はかなり怖いが・・・俺はそれに対して怯まずに答えた。
「俺の夢は主夫になることだけど、今は少し違うんだ」
「違う?」
「うん。俺は先生・・・黒羽遥香さんと、その娘の黒羽千鶴ちゃんと本当の意味で家族になりたいんだ」
そこで頭を過るのはさっき3人で夕食を食べた時の光景。俺の料理を美味しそうに食べる二人に俺は心が温かくなるのを感じた。確かにはじめは主夫になりたいという希望から始まった関係だが、今日一日で俺は二人の家族に心底なりたいと思うようになったのだ。
まだ芽生えはじめたばかりの小さな想いかもしれないが・・・それでも俺はこの気持ちを育てていきたいのだ。
俺の言葉を聞いて父さんはしばらくこちらを見つめていたが・・・ふぅ、とため息をついてからいつもの微笑みで言った。
「わかったわ。今はそれを認めてあげる」
「ありがとう父さん」
「ただ、私は可愛い息子が不幸になるようなら、結婚には反対させてもらうからそのつもりでいなさい」
ひとまず俺の方の課題はクリアできそうだ。にしても・・・
「そう言うならもう少し家族との時間を取ればいいのに。海斗が父さんのこと勘違いするのもそれが原因なんだし」
「反抗期なのよ。今は隣の県で寮生活を満喫してるでしょう」
今はいない弟のことを思って俺はそう言うが父さんはそう言って苦笑するだけだった。そうして俺はこれから毎日先生の家に通って好感度上げに勤しむことと、先生との結婚の件を認めて貰えたのだった。