二話 親友の話をさせてくれ!
「間に、合っ、たぁ~!」
ギリギリでなんとかチャイムが鳴る時間前に登校できた。校門前の俺の周りには、先生も生徒もいない。今は自分しかいないんだな。皆ちゃんと登校して来てるのかよ偉いな。
さて、全力疾走でここまでこれはいいものの、こっから教室に入ったとしても、周りの人達からの視線な。どうしたらいいも…
「お~い、蓮~!」
「ごるふぁみろんッ」
急に背中に衝撃と痛みが走ったと思ってたら勢い余って前につんのめった。顎打ち付けた痛え。
誰だよ背後から人の名前呼びながらドロップキックかましてくる奴は。喉の変なところから変な声出ちまったじゃねぇか。
背中痛いなまじで。
さっきまで人の気配誰も感じなかったぞ?
後ろを振り向いて見て犯人を確認した。
「よっ!蓮!」
「よっ!じゃねぇよ?!」
あーやっぱお前なんだね?朝から人にダイナミックに蹴り入れて、ドヤ顔で誇らしげな表情してるの、俺の親友もどきのお前なんだね?
「ふっふっふー!お前の友人の反ノ塚真也様が、浮かない顔のお前に朝から元気な挨拶してやったんだぜ!」
「いらねぇー元気な挨拶だな?!」
朝からこんな挨拶、外国でも絶対ないと思うし、要らないけどな?!
「んで、蓮はなんでこんなところにいるんだ?」
「あー、えっとだなー…」
まだ蹴られた背中は痛むが、辛うじて立つ事は出来た。
「お前の弟いるじゃん?大介君」
「あぁ。なんだ、大介に会ったのか」
反ノ塚真也の弟、大介君は、俺の妹と同級生で、俺はコイツと同級生なんだよ。
なんつっーか、俺はコイツとは切っても切り離せない腐れ縁みたいだなって思うが、あくまで、コイツがどう思っているからわからん。
親友もどきって言ったが、コイツが俺をモルモットとして扱うんだよ。いや、モルモットよりも扱い酷いんじゃないかこれって思う。
いや、待て。話が逸れた。さっきまで大介君との流れを話すべきかと思ったが、あとニ、三分でホームルーム始まるんじゃないのか?いやでも、周りからの視線があるかもしれないが…。
あっ、俺頭良いかもしれない。
「真也!時間無いから教室行くぞ!ほら!急げ!後でゆっくり話してやっからよ!」
「お、ホントだ。時間ないな」
駆け足で教室へと向かう。
そう、真也と同じ教室だからな。同時に足を踏み入れば、周りからの視線など感じずに行け
る!
それにコイツは、クラスの中ではAクラスに属す、言わば上位クラスだ。一方の俺は、Cクラスにせいぜい留まる事が辛うじて出来る位な俺だ。
間違いなく視線を多いに受けるのは、俺じゃなくて真也、アイツだ!!
教室サイド
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「なぁなぁ、これうちの学校の制服じゃないか?」
とある教室で、男子生徒がスマホをいじっていると、SMSで人気なツイートを発見した。それは、今朝の出来事と思われる二人の男子が写った写真を見つけたからだ。
「あれ?この人、どっかで見た事あるような…」
「えっ?!嘘、この隣にいる小学生って、真也君の弟の大介君じゃない?!」
この学校の制服と思われる生徒が地面と一体化し、それを見下すように、ランドセルを背負った男の子が写った写真だ。ツイート名は、『朝からアスファルトと一体化してる高校生がいる』というツイートで、今のところ五万リツイートと四万いいねが押されている。
「えっ。って事は、隣にいるのって…」
「はぁ~い、皆ー、ホームルーム始めるわよ~」
このクラスの教諭、小野夢月先生。
生徒達には名前の頭文字をとり、『こむちゃん先生』と呼ばれていて、生徒に親身になって優しく接してくれる為に、生徒達からの評判は良い。でも、一つ言うのであれば、こむちゃんの先生の前で、恋愛話や恋人関係になりましたと、報告すると、妬みと言うなの嫉妬で黒板にその生徒の名前を書き出す始末になる。
終始、止めようとする生徒がいる一方で、煽るように言う生徒もいるので、こむちゃん先生に恋の話をしてはいけない。
要するに、未だ恋人いない歴=年齢のアラサー女子の先生だ。
そんな先生が、ホームルームの為に教室に足を運び教卓の前へと立つと、数名の男子生徒から色めき立つようにスマホ画面を見せられた。
「こむちゃん先生!これ見て!これって…」
と。一人の男子生徒が先生に画面を見せながら言葉を続けようとしたのだが、教室の入り口側から、二人の生徒が扉を開けて入って来た。
「セーフ…!」
「いやセーフなのかこれ?!」
一人は、扉を豪快に開けて「セーフセーフ!」と言って足を踏み入れている、このクラスの人気者、反ノ塚真也。
もう一人が、このクラスとネットワーク上で話題に上がっている、瀬尾蓮。
クラスメイトからの視線と、こむちゃん先生からの視線を一斉に感じる。
「俺なんかやったけ…?」
今までに感じた事のないような視線に嫌な汗が背中を伝った。
笑いを求めたい。
物足りないさを感じる。