白い衣で踊る娘
人生とは踊りと共にある国の、白い衣の娘。黒衣の舞姫と共に踊る彼女の話。
※悲恋かメリーバッドエンドです。
その国は喜びも悲しみも人生は踊ることにあると考えていた。
子どもが生まれた時に踊り、恋をしては踊り、結婚しては踊り、親しい人間が死んだ時に踊り、死んでからは残された者たちが悲しみに打ちひしがれて踊れないでいるか確認する。
人生とはまさに踊りにあった。
大きな街では必ず、黒衣の舞姫が街の中心部にある広場で踊る。この舞姫たちは神に仕える巫女たちだ。亡くなった者たちの冥福を祈り、死者を悼む人々の代わりに晴れた日はいつも踊っている。
黒衣の舞姫たちが踊るのは日が出てからそれが真上に来るまでの間。
巫女たち以外もその踊りに飛び入りで参加することが許されている。
飛び入りで踊る人々も様々だ。デートの誘いに初めてOKをもらえた少年、お母さんに縫物の出来栄えを褒められた少女、給料が上がった男、恋人たち。
彼らは巫女たちのように神に死者の為に踊るのではなく、彼らは感謝を神に捧げて踊る。時には黒衣の舞姫たちのように悲しみを神に和らげてもらうことを願って踊る。
黒衣の舞姫の中に白い衣の娘がいた。一人だけ色の違う服なので、それはよく目立っていた。
飛び入り参加の彼女は太陽が真上に来ても踊り続ける。
巫女たちが踊り終え、娘に声をかけるが、彼女は首を横に振って踊り続けた。
黒衣の舞姫の姿がなくなっても、広場では白い衣の娘が踊っていた。
他の者も踊りに来ては帰って行く中で娘は踊り続ける。
日も暮れ出した頃には娘の足取りはおぼつかないものになっていた。それでも、娘は踊る。
「よお、姉ちゃん。踊ってないで俺たちと酒でも飲もうぜ」
完全に日が暮れた頃、仕事帰りの赤ら顔の男が声をかけた。
だが、男たちは風に揺れる麦のように踊る娘の答えを聞く前にフラフラとどこかに立ち去った。声をかけてから彼らは娘の鬼気迫る表情に気付き、声をかけてはいけない相手だと気付いたのだ。
夜更け、娘は冷たい躯になった。その表情はとても幸せそうだった。
最後に生きている娘を見た老人は語る。
「彼女はそれは楽し気に男と踊っていた。いきなり、糸が切れたように倒れたかと思ったら、男の姿は煙のように消えとった」
この話は、その日着るはずだった花嫁衣装で死ぬまで踊っていた哀れな娘を前日に死んだ恋人が迎えに来た話だと伝えられている。
そして、黒衣の舞姫たちはその話の娘のことに羨望の眼差しを向ける。彼女たちもまた恋人や夫を失い、しかし、娘のように死ぬまで踊り続けることができず、その悲しみが少しずつ癒えるのを待つしかないから。
続きは絶対にありません。
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