第1話、本能寺の変
あの日ワシはハゲネズミの為に西へ向かうつもりであった……。
「あぁ、明智日向守様、ご…ご謀反!!」
蘭丸の悲痛な報告と寺を囲む桔梗の旗印。ワシはなぜか笑いがこみ上げてきおった…。
「ワァッハッハッハッ……!!!あのキンカン頭め!やりおるわ!!」
ビュン!!ビュン!!
ワシの家臣だった連中が寺に火矢を射ってきおる。寺はあちこちから燃え始めた。
バリーン!!!
寺の門が打ち破られ、明智勢がわーっと浸入してくる。
ワシは蘭丸から差し出された愛刀、宗三左文字を抜き向かってくる雑兵の首を次々と刎ねた。
…………。
………。
……。
蘭丸たちも勇敢に戦っておるが多勢に無勢。ひとり、またひとりと討たれていく。本堂は激しい炎に包まれていった…。
「是非に及ばず……蘭丸共に地獄へ参ろうぞ!!」
「ハッ!わっ!!大殿っ!!ぐっ!!!」
ワシはニヤけながらそばにいた蘭丸の襟首を無理やり掴み、燃え盛る火炎の中に入っていった…。
……………。
地獄の業火とはこうもラクなもんなのか??ワシの着物まで燃え始めているのにまったく熱さは感じられん…。
まあ良い。炎を纏い、天下の名刀で腹を切れば閻魔大王も驚くに違いない。そうか!仮にも第六天魔王と呼ばれたワシじゃ。閻魔大王をも討てるやもしれん!地獄で天下布武するのもこれまた一興!!!
ワシは右手に宗三左文字、左手に蘭丸を持ち仁王立ち。座って腹を切ろうかと座ろうとした瞬間、
ドドドーォッ!!!
天井が崩れ落ちてきおった…。そこから先はワシにはわからぬ…………。