海月【400文字小説】
海の中で海月がふわふわと浮いていた。
エサを探しているのかもしれないし、ただ単に漂っているだけなのかもしれない。
ただ、その姿は見とれてしまうほどにきれいだ。
きれいなバラにはとげがあるという言葉があるように下手に触れては刺されてしまうので少し距離を置いての観察だが、それでも十分だ。
周りに他の海月の姿はないのだが、仮にこれが大群なら一目散に逃げ出すところだ。
群れからはぐれたのであろう海月はしばらくその場に留まっていたが、少し別の魚に気を取られているうちにいつの間にか潮に流されて姿が見えなくなっていた。
ボクはなんとなく海月の行方が気になって周りを見てみるけれど、その姿をもう一度見ることはできない。
おそらく、今も孤独にこのあたりの海を漂っているのだろうか? はたまた、群れに合流して海月の大群にでもなっているのだろうか?
その真相はわからないが、ボクは海月の姿をしっかりと記憶にとどめながら陸へと向かった。