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・黒赤軍団名簿録

この度、我らが主こと通称『黒き赤文字の悪魔』が魔界の総裁に任じられ、ひとつの軍団を預かるという名誉を賜った。

と言っても、我が主に仕えたかつての従者ばかりで構成されているので、預かるという言葉は不適格なのだが。

とは言え、ひとつの軍団として認知され、その指揮権を預かったということには変わりない。


そこで最初の従者であった私が、今まで我が主に仕えた従者57名の名簿を作ることになった。

ついでに彼らの簡単な略歴などを記載していこうと思う。魔界での活動の助けになるだろう。


しかし、彼らも捻くれ者の我が主に仕えたというだけあって、非常にくせが強い。

名簿ひとつ作るのも困難を極めるだろうが、これも主に任された仕事のひとつに変わりはない。

各々の話を聞け次第、随時追加していく。


なお、私の時は無かったのだが、我が主は部下の名前すら覚えたがらず、自分でつけた変なあだ名で呼ぶので、各々の個人名はそれを記載する。




№2 赤錆

性別:女性 享年:24歳 忠誠:敬愛

略歴:

食うに困り錆の浮いた剣で盗賊行為をしようとして主と私を襲い、見事返り討ちになった赤毛の少女。

当人曰く没落した騎士の家の出らしく、家族も死別、財産も無く、盗みで食いつなぐも町から追い出されたのだという。

がさつ、自分勝手、短気の三拍子が揃っており、その上気位まで高いので私も主も手を焼いた覚えがある。

主も面白がって慈悲を掛けるものだから、下女として雇うことになった。

主もトラブルメーカーであったが、彼女の喧嘩っ早さで要らぬ恨みを買うことも多かった。

自衛の為に剣の手ほどきなどしなければ良かったと今でも思う。

後になって家が没落した元凶と出会い、その末に決闘。刺し違えて、父親の名誉を守った。




№3 教授

性別:男性 享年:67歳 忠誠:師弟愛

略歴:

“魔術同盟”の『本部』を拠点としていた高齢の魔術師。

研究肌の人間であり、黒魔術全般についてだけでなく、一般教養及び博物学に深い造詣を持つ。

我が主が師と仰ぎ、彼なくして我が主は無かったと言えるほどの知識人。

そして主がただの子供から捻くれ者の食えない人物になったのは、ほぼ彼の所為である。

人から変じた悪魔である主に興味を抱き、同行。そして従者となる。

主を孫同然に思っているのか、後年病床に伏してから亡くなるまで多くの知識を主に授けた。

“魔術同盟”とのコネも彼があってこそであり、死後も彼は主を支え続けた。



ここから先は私も面識が無いのだが、どいつもこいつも過去に暗いものを抱えているので話に応じてくれた者のみを記す。





№11 クラッシャー

性別:女性 享年:19歳 忠誠:敬愛

略歴:

破壊姫。問題を起しすぎて廃嫡された本物の王族の姫君。

その問題というのが、器物損壊である。

生まれつき建物などの脆い場所が分かり、少ない労力で派手に崩壊させる方法を熟知していた。

城内どころか城壁まで大穴を開け、王族として不適格として避暑地の離宮に軟禁されていたのを逃亡したところを、主と遭遇。紆余曲折を経て従者となる。

無邪気でありながら己の破壊衝動に忠実で、頑丈な物を見るととても壊したくなるらしい。

優雅で気品があるが、建物を壊す際の笑い声はとても聞けたものではない。

常に自分の限界に挑戦しており、いつか大地を真っ二つにするのだと意気込んでいる。




№19 ペインフロード

性別:男 享年:33歳 忠誠:敬意

略歴:

痛みを望む小説家。物書きになる為、神学校を出て神父を経る経歴を持つ。

彼は出版物を規制する側へと回ることで、自由な創作物を作り出すことを望んだ。

しかし教会の闇へと触れ挫折、その際に己に生じた強烈なコンプレックスと屈辱を己の作品にぶつけたことで、自身の創作意欲が極限にまで研ぎ澄まされることに気づく。

以来、左遷先で神官戦士として無謀な戦闘と自傷行為を繰り返す。

主の従者となったのも、敵に捕まり暴行を受けていたところを助けられた為である。

それすらも彼は創作意欲を掻き立てる衝動へと転化したのだと語る。

彼は己の作品たる長編小説を完成させると、主に感想を頂き、暇を貰う。

最後に己の作品を焼き払うと教会に出頭し、処刑された。

魔剣『リフレクトペイン』を所有。

なお、主に彼の作品の内容について訊くと、「微妙。」と返された。

現在第二作目に取り掛かっているらしい。




№23 アイアンハート

性別:女性 享年71歳 忠誠:皆無

略歴:

鋼鉄の精神を持つ修道女。巡礼の旅の最中、主を見咎め改心させようと同行する。

それから行動を共にし、教会の専横を見続けた彼女は自らの考えを見直し、集団の大義ではなく個人の意志で弱者を守るために主と同行することとなる。

初めて教会の横暴を眼にした時、彼らから人々を守る代わりに主の従者となった。

戦闘力は皆無だが、従者全員の中で唯一老衰で亡くなった。

常人ならトラウマになるような光景や状況、二度と立ちなれないだろう絶望を経験しても決して折れない精神力を持つ。

主曰く、異次元の精神力の持ち主だという。一度悪魔を意志力だけで撃退したこともあり、エクソシストになれば歴史に名を残しただろう、とも。

胆力も凄まじく、大の男が音を上げるような行程でも顔色ひとつ変えなかったと言う。

下記のサイケデリカに気に掛け、絶えず声を掛け続けていたようだ。

魔剣『アイアンハート』を所有。




№25 サイケデリカ

性別:女性 享年27歳 忠誠:不明

略歴:

幻覚の中に生きる魔女。重度の麻薬依存症及び色覚障害者。

常に幻覚、幻聴の中におり、現実を正常に認識できない。

極彩色の衣服を好む。

彼女にとってそれが普通であり、それは現実を侵食し幻覚との境界をあやふやにしてしまうほど。

魔術師の家系に生まれ、幼少期から凄まじい才能を見せて疎まれ、捨てられたところを主に拾われる。

その頃から既に意思疎通も困難であったが、不思議と彼女は周囲のことを理解していたという。

主の危機に単身、敵勢に狂ったように突撃し、敵を壊滅させて以来、精神死を迎え、現在も彼女は沈黙している。

魔剣『イリュージョンシフト』を所有。


こうして彼女の略歴が書けたのは、我が主が教えてくださったからである。

しかし、こうやって文章に起すと、なぜか聞いたこと以上の内容を書いてしまっている。

ふと、振り向くと背後でベッドで眠っているはずの彼女から視線を感じた気がする。

恐らく、気のせいであろう。




№34 マイザー

性別:男性 享年:29歳 忠誠:契約

略歴:

その名の通り、生粋の守銭奴、というより拝金主義者。商家の出身で、非常に弁が立つ。

代々続く店を親友に騙し取られて以来、誰も信用しなくなり、形のあるものを扱う商売をしなくなった。

具体的には、詐欺師となったのである。当人は心を切り売りしているだけと言っていた。

当初は主も騙そうと企んでいたが、魂の契約の前に挫折。以来、従属している。

当人はとりあえず金さえ手に入ればいいらしく、儲けさせてくれるので不満は無いらしい。

金は命より大事と豪語し、時には主すら利用して金儲けを画策する。

主は主でそれを面白がってみているからたちが悪い。

金を儲けるのが好きなだけで、溜め込むことには興味が無いらしく、金貨の山がその日のうちに消えることもある。




№42 チェリー

性別:女性 享年:不明 忠誠:敬愛

略歴:

真祖の女吸血鬼。元々は人間だったが、生来吸血症であり、母親の母乳より先に血を吸ったとされる。

その性質ゆえに彼女は自分を吸血鬼だと疑わず、周囲もそのように疎んだ。

そしていつしか本物の怪物へと変貌したのだという。

彼女がそれに気づいたのは主と出会ったのがきっかけで、それまでは血を嗜む程度だった。

しかし別の吸血鬼の犯行を彼女の所為にされ、町の人間から殺されそうになったところを主に助けられ、従者となる。

極めて理性的で、貴族を思わせるような気品に溢れ、眷族を作ろうとはしない。

自身が怪物であることを心から楽しんでおり、主もその姿を今までで一番完成された美しい吸血鬼であると称する。

一度肉体を失った所為か、吸血鬼としての怪物性は格段に増している。

魔剣『ヴァンパイアラヴァーズ』を所有。




№56 セーフティ

性別:男性 享年:37歳 忠誠:忠義

略歴:

最後の騎士。従者の中で最後の騎士という意味ではなく、騎士制度を唯一残していた国の最後の生き残りであり、正真正銘の世界最後の騎士である。

平民の家の出で、騎士となってからは首都の警備を預かる。

戦争の激化でごっそり仲間が死に絶え、軍団指揮経験も無いのに二百余名の手勢を率いて数万の敵勢とかつての国主を逃がすため最後まで戦い抜いた騎士の中の騎士である。

その死に際を主に拾われ従者となる。

仕えるべき主君を失い意気消沈した彼は新たな忠義の有りどころとしての懐を見せた我が主に忠誠を誓っている。

名実共に騎士の鑑と呼べる人物であり、私ともすぐに意気投合した。

専守防衛を基本とした熟達した剣術を扱い、彼が居ると居ないとでは安心感が段違いであろう。

魔剣『ディメンションセーフティ』を所有。




№57 エリュシオン

性別:男性 享年:不明 忠誠:盲従

略歴:

煉獄を宿す少年。あらゆる物を燃やし尽くす神話級の魔眼を有して生まれ、初めて眼を開けた時に町をひとつ燃やし尽くした。

以来、教会に保護され、その力を悪用され続けたがそれに嫌気が差し、教育係を焼き殺して逃げたところを主に遭遇、従者となる。

我が主を兄のように慕い、主も彼を弟のように可愛がっている。

無邪気で子供らしいが、芯は強いものを持っている。

その純朴さに癒される者も多い。

主の生前の最後に立ち会った一人なのだが、そのことに関して決して語ろうとはしない。




以降、順次追加していく。





“魔族の掟”で掲載したものをそのまま移転しました。

話数の増加や新キャラの登場によって増えるので、乞うご期待。




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