プロローグ
プロローグ
「と、いう訳ですので、あなたの生活保護申請は受理いたしかねます。まずはハローワークへご相談ください。」
まったく、ちょっと生活に困ったらすぐに生活保護の相談って考えている人間が多すぎる。生活保護ってのは、本当に生活に困っている人が受けるものだ。
僕は草野秋人。生活保護の相談窓口を担当している市の職員だ。就職してすぐに今の部署に配属され、今年で3年目を迎えた。正直この仕事にはうんざりしていて、さっさと異動したいが中々希望が通らない。
今はそんなことより今日の業務を終わらすことに専念しないと残業が増えてしまう。
「次の方、どうぞ。」
毎回繰り返される同じようなやり取りに飽き飽きし、次にどんな相談者が来るかなんて最近はどうでもよく、機械的に事務をこなすだけになっていた。
呼ばれて現れた新たな相談者が丁寧に腰を掛けた。
「お待たせしました。では、どのような・・・」
が、外人か?相談を受けて3年になるけど初めてのケースだ。しかも綺麗なさらさらの金髪に、澄んだ水色の瞳の美青年。身なりも黒の綺麗なスーツを着ているし、何か間違えてここに来たのだろうか?
「あの、失礼ですが当市に住民票がある方でしょうか?あ、日本語は通じますか?」
「住民票、とはなんだろうか。生活に困ったらここに行けばいいと聞いたのだが。」
とりあえず日本語は通じるのか。こういうケースは以前にもあった。住民票を他の地に置いたまま諸事情があって転々としているパターンだ。しかし異国の方かぁ・・・
「まず、申し訳ございませんが、当市の市民でない方のご相談をお受けすることが出来ません。それと国籍はどうなっていますか?」
「つまりどこから来たか、ということか?私はアルガスヘイトからこの地に来て、現在は玉北町に住んでおる。」
見た目は二十代前半。流暢な日本語を話すわりに言葉がちょっと変なのが気になる。
「アルガスヘイト、ですか?すいません、それはどこの国の地名でしょうか?」
聞きながらインターネットを使って検索してみるが、そのような地名は出てこない。これは難しい人が来たぞ。僕の第六感が危険信号を発信している。
「アルガスヘイトという国だ。まあ小国であるがこの日本国よりはかなり大きいぞ。あなたが知らないのは無理もない。こちらで言うところの異世界に存在する国であるからな。」
「あの、とりあえず、その・・・」
「ん?なんであるか?」
「今日のところはお帰りくださいませんか?」




