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スキルゲーム  作者: 砂漠野 駱駝
アフタープロローグ
5/5

その1

今回も一部不快になる表現がございます。苦手な方はご注意ください。

 良介が目が覚を覚ますと、すぐ視界に入ったのはまったく見覚えのない天井であった。


 天井や壁はコンクリートを打ちっぱなしにしているのかとても寒い印象を与えたが、天井の蛍光灯の光が部屋を暖かく照らしていた。


 部屋の中央には真っ白なシーツのベッドがあり、良介はそこに寝かされていた。ベッドのすぐ右側に台があり、その台の上のデジタル式の時計の日付を確認すると、あの夜から丸一日が経っていた。


 その時、良介は左手が自由に動かせないことに気が付いた。まだ朦朧もうろうとする意識の中で首を巡らすと、自分の手を誰かが握っているのが見えた。


 良介の手を握っている誰かはベッドに上半身を預け、すやすやと寝息を立てていた。


 背中にちょこっとかかる位に伸ばされた明るい茶色の髪はうなじの所で二つに縛られている。いつもはくりくりとした黒目がちなおおきな目はキラキラと輝いているが、眠ってしまっていてその瞳は閉じられていた。

 少しだけ日に焼けた健康的な美を感じる肌はきめ細やかくすべすべしていて、手だけしか触れていないにも関わらずその感触は良介に十分すぎるほど届いてくる。小動物を思わせるような小柄な体躯はまもってあげたくなるほど華奢きゃしゃであり、その容姿は全体的に美人と言うより、かわいいと言いたくなる少女だった。


 良介の手を握って眠っていたのは、ずっと昔から良介と一緒にいた幼馴染の琴音桜ことねさくらだった。


 良介はその少女が幼馴染の桜であることを認識すると意識を一気に覚醒させ、バッと起き上がった。


「ここは...?」


 良介が起き上がって辺りを見回すと、


「ようやくお目覚めかい。良介君」


 突然甘く透き通るような声を掛けられた。


 そこにいたのはホストのような甘い顔を持った金髪の優男だった。

 紺色のブイネックのティシャツと乳白色のジャケットを着こなして、良介のベッドのすぐ眼の前に座っていた。


「あんた...だれだ」


「桜ちゃんの仲間で君の味方。組織チーム【スペムウルティマム】のリーダー、川島大和かわしまやまと。よろしくね」


 そう言って川島は良介に笑いかけた。家で暇を持て余しているマダムなら――――いや、たとえ暇を持て余していなくとも――――一撃で落とせそうな頬笑みだった。


「で、何から聞きたい?昨日の事の顛末。何故襲われたのか。桜ちゃんのもつアノマリ症候群。超能力。【管理局】と呼ばれる組織。【スペムウルティマム】」


「ここはどこだ?」


「ん?ああ、確かにその質問が抜けていた。ここは僕たち【スペムウルティマム】が【管理局】から逃れるために用意した隠れ家の一つ。ここの場所は【スペムウルティマム】のメンバーしか知らないから襲撃の心配はしなくて良い」


「襲撃?」


「【管理局】から、もしくは別の組織チームからの襲撃」


「【管理局】……?」


「お、興味が湧いたのかい?それじゃまずは【管理局】について話そうか。

 【管理局】は政府の超極秘特務機関。超能力者の取り締まりを主な業務としている特別組織。また、アノマリ症候群が一般人に知れ渡らないようにするための情報統制から機密情報規制までを行う政府のブラックボックス。超能力者と見れば目の色変えて捕獲に移る戦闘狂たちの巣窟。他にも色々言われているが、言ってしまえば政府の後ろ盾を持った、超能力者に対する警察組織の様なものだと思ってくれて構わない。

 そもそも【管理局】が出来たのは数十年前に起きたある事件が切っ掛けだ」


「事件?」


「そう事件。事故ではなく事件。数十年前、日本で大きな事件が起こった」


「?そんな話聞いたことがない」


「そりゃあ【管理局】による情報規制がかかっているんだから当然さ。それに結構昔の話だからね。それこそ第二次世界大戦のときの事だしね。あの事件が公表されれば政府の信用はガタ落ち。世界中の国々がこぞって日本を解体して自分の国の領土にするべく覇権争いが始まって、最終的には日本と言う国がなくなるレベルの話になる。日本の根底を、というか世界の根底を覆すような話さ。あの事件が明るみに出れば、戦争の仕方も経済の動かし方も国のあり方も変わる。エネルギー問題も国家間や宗教観の対立も人類の繁栄から滅亡まで一手に解決出来ちまう」


「その事件って?政府の信用がなくなってしまうほどの事っていったい……」


「僕たちだよ。僕たちの持ってる超能力。アノマリ症候群。数十年前に起こったテロ事件は超能力を使って引き起こされたものだった」


「……なにがあったんですか?」


「今から100年前。ちょうど第二次世界大戦が終わりかけていた時の事だ。当時日本側枢軸国陣営は劣勢だった。日本国軍の兵士の残りも少なく、民間人の中から徴兵して敵陣に手榴弾持たせて突っ込ませなきゃいけない位にね。そんなときに日本政府は少なくなってしまった兵士の質を上げるという策に出た。すでに質より量なんて戦法が出来なくなっている位逼迫(ひっぱく)していたから。だから当時の日本政府は兵士一人が敵の百人に匹敵するくらいに強くするにはどうしたらいいのか必死に考えた。すでに日本の負けは決定づけられていたにも拘わらず、それでも政府のお偉いさん方は諦め切れなかった。そこで目を付けたのが当時ドイツで研究されていた超能力研究だった」


「超能力研究?そんな事してたんですか」


「ああ。そして皮肉なことにその研究は成功してしまった」


「え?」


「アノマリ症候群。それはある病原菌が人間の脳内に侵入し、人間が今まで使っていなかった領域を塞いでいたリミッターを破壊する、そういう感染病。数十年前、フランスのある医者がそのアノマリ症候群と言われる感染病を発見した。まあ当時の学界はその医者の言っていた事を端から嘘だと決めつけてその医者を学界から追放したが、それを日本政府が拾ったわけだ」


「フランスの医者って、当時の日本からしたら敵国の人間でしょう?よくそんな人間を日本に引き入れましたね」


「藁にもすがる気持ちだったんだろ。まあ何はともあれその医者は日本の研究機関と共にアノマリ症候群の謎を突き止め、ついには人為的に人を超能力者にする薬を開発したわけだ」


「良かったんじゃ無いんですか?薬が完成して」


「事はそう単純じゃないんだよ。実際、完成したと言っても現に日本は戦争に勝っていないだろう」


「そういえば…。でもなんで?」


「フランスから招き入れた医者が完成した薬を持って逃走したんだよ」


「逃走!?」


「うん。薬が完成したその日に、ともに活動していた日本の研究チーム57名を殺害した後、7名の被験者を連れ行方をくらませた。ご丁寧に完成した薬はすべて持ち去られ、研究データは施設ごと爆破されて消滅。唯一の生き残りはその日日本政府の重役たちに薬の完成を報告に行っていた研究所の局長だけ。もちろん日本政府はすぐに行動を起こした。このまま超能力者たちを野放しにしていたら何が起こるか分からない。枢軸国側の負けで片が付きかけていた第二次世界大戦がさらに悲惨なものになると誰もが予想した」


「それで?」


「日本政府は動かせる人員を動かせるだけ動かした。文字通り草の根をかき分けて探させた。だがいつまで経っても彼らを見つけ出すことは出来なかった。そうして1945年8月14日、日本はポツダム宣言を受諾。結局彼らは何のアクションも起こさなかった。それでも危険な事には変わらない。超能力者たちが暴れだせば世界にどれだけの混乱が起こるか誰にも計り知れない。しかし戦争が終わったため日本は彼らの捜索に軍を使うことが難しくなった。だから政府は専用の対策機関を作った。後に【管理局】となる【危険特殊技能保持者総合取締局】。【危険特殊技能保持者総合取締局】は日本の改革のたびに名称、所属を変えながらも奴らの捜索を継続してきた」


「それで捕まえる事が出来たのか?」


「ああ。当時被験者だった超能力者のうち5人を発見、後に捕縛して隔離した。2人は病気、3人は寿命で死亡している」


「後の二人と逃げ出した医者は?」


「まだ見つかっていない」


「見つかってない?じゃあまだ生きてるって言うのか?」


「その可能性が高い」


「そんな馬鹿な?100年以上も前からずっと生きてるって言うのか」


「目撃情報があるんだよ。その医者と共に逃亡した超能力者たちのね。大体1年に5回ほど報告されてるらしい。と言うか君ももう会ってるはずだ。1945年以降からアノマリ症候群に感染している能力者のほとんどは彼に出会ってる」


「いつ、誰だよ」


教授プロフェッサーさ。白髪の眼鏡の男。君が能力を使えるようになったその時、彼がいたはずだ」


「あいつが?」


「その顔は見たんだね、彼を」


「あいつが俺をアノマリ症候群に感染させた」


「そうか。そういえばさっき【管理局】が僕らを襲撃しに来るかもしれないって言ったよね」


「ああ」


「それは教授プロフェッサーのせいなのさ。彼が人為的にアノマリ症候群を人に感染させる薬をばら撒いているから、【管理局】は新しく生まれた能力者の管理もしなくちゃいけない。だから、彼らは【管理局】と呼ばれているのさ」


 川島そこまで語ると部屋を最弱が包み込んだ。

 それから数秒後、良介の心にある疑問が浮かび上がった。


「何か質問?」


 川島は良介の何か聞きたそうな表情を察したのか助け船を出した。


「一つ聞いても良いか?」


「どうぞ」


「あんた、何であんなことを知ってたんだ。だってそうだろ。普通だったら知らない様な事をなんであんなに知ってるんだ?【管理局】に情報規制を掛けられている話を何で【管理局】でもないあんたが知っているんだ?」


 その良介の質問に対し川島はなんてこともないかのように答えた。


「ああ。それは僕も【管理局】だったからだよ」


「え!?」


「2年前まで僕も【管理局】に居たんだ。だから知ってる」


「何でやめたんだ」


「あそこのほんとの姿を見ちゃったからさ。酷いもんだよ、本当に。同僚が何人も死んでいった。上司も部下もまるでゴミを捨てるみたいに使い潰されていった。来る日も来る日も能力者と戦わされ殺し殺される。毎日飽きもせず闘ってその果てに虫けらみたいに死んでいく。でもあのころはそれが正義だと信じていた。いや、信じさせられていた。薬物と暴力と洗脳で頭の中をぐちゃぐちゃにされて、まともに考えることも出来ずゲームのアバターみたいに争わされる。あそこは地獄だよ。あそこにつかまったら何をされると思う?まずは薬っで洗脳される。頭の中のもん全部あいつらに調べ上げられて少しでも有能なら兵士として能力者を狩らせる。でもそれはまだいい方さ。使い物にならない能力者は限界まで能力を行使し続けられて耐久時間を測られたり、生きたまま脳に電極ぶっ差して脳波を検出されたり、体中をばらばらにされてホルマリン漬けの標本になる。研究者あいつらはあんな事件が起こったのに何の反省もしないで同じことをしている。50人以上が殺されたのにも拘わらずだ。おもちゃで遊ぶみたいに俺たちを弄繰り回すんだ。だから出て行った。出て行って、この【最後の希望(スペムウルティマム)】を作った。【管理局】に対抗するために作った超能力者のための保護組織」


「じゃあ、あんたの目的って【管理局】を潰す事なのか」


「いいや。さすがにそんな夢みたいなことはしない。向こうには日本政府っていうバックボーンがあるんだ。どれだけあいつらを倒しても替えは効く。あそこに居た僕だから分かる」


「という事は…」


「僕たちは自衛の組織チームだ。僕たちの目的はあくまでも自衛。君みたいな成り立て(ニュービー)の保護を目的としている。【管理局】や別の組織チームからのね」


「別の組織チーム?」


「そう。超能力者はいくつかの組織チームに別れている。例えば僕たち自衛を目的とした【スペムウルティマム】や君を襲ってきた【イノセントイーヴィル】もその一つ」


「そうだよ、俺たちを襲ってきた奴は一体何なんだ?」


「【イノセントイーヴィル】。【管理局】が一番敵視している組織チームさ。最低最悪最恐の組織チームで人殺しを最上の喜びだと詠う殺人鬼ども。

 そうだ。昨日の事は桜ちゃんから聞いたよ。すまなっかたと思っている。僕たちの到着が遅れたせいで、桜ちゃんに危険が及び、君をアノマリ症候群に感染させてしまった」


 川島は深く頭を下げた。


「べつに気にしてない。どっちにしろ桜が守れたんだ。そんなに気にすることじゃない」


 そう言って良介は自分の左手をギュッと握りしめたまますやすやと眠る桜の頭を撫でた。


「そう言ってもらえると助かる。

 良介君、君はまだ病み上がりだ。アノマリ症候群に感染したばかりなのだから無理はよくない。もう寝なさい」


 その瞬間、良介はどっと疲れがやって来た。

 良介は後ろへ倒れこむと泥のように眠り始めた。



 ◆◇◆◇◆◇


 次の日、良介が目を覚ますと、目の前に自分の顔を覗き込んでいる顔があった。


「...桜?」


 それは幼馴染の少女の物だった。


「良介!」


 桜は良介が目を覚ましたことに気付くと、すぐさま良介に抱き着いた。


「よかった。目を覚まして。心配したんだからあ」


 良介に抱き着く桜の目には少しだけ涙でにじんでいた。顔を良介の胸に埋めながら桜は小刻みに震えている。不安だったのだろう、と良介は考えた。


「ごめんな。桜」


 良介はベッドの上で起き上がりながら、もう離すまいというように良介の体をギュッと抱き着いている桜の頭をなでた。

 すると、桜がさらに良介をきつく抱きしめた。少しでも気を抜けば、目の前の人がどこか自分の手の届かない場所へ行ってしまいそうな予感に駆られてしまったからだ。


「ばかばか!良介がずっと目を覚まさなくてほんとに心配したんだからね!」


 桜は幼い少女が駄々をこねるように首をいやいやと振りながら言った。


 しばらくそうしていると、


「.....桜。痛い」


 良介の体をぎゅうっと抱きしめていたため、先日炎使いの男と戦った時の傷に響いたのだ。

 桜はそれに気が付くとすぐさま飛びのいた。


「ごめん!良介」


「いいって」


 桜はもじもじとしながら椅子に座りなおした。


「ごめんね。あたしのせいで...」


「別に桜のせいじゃない。気にしなくっていいって」


「でも…………」


「桜のそういう所、昔っから変わらないよな」


「う.....。そうかな」


「そうだよ」


 コンコンっと硬いノックの音が入口の方から聞こえた。良介と桜がそちらに目を向けると初老の男性が右手を壁に打ち付けた体勢で良介たちの方を見ていた。


「お取込み中すまんが、大和が呼んどるのでな。ついて来てくれんか?」


「あなたは?」


「この人は富永とみながさん。【スペムウルティマム】のご意見番」


「よしとくれ。ご意見番なんぞ。良いから早く来るんじゃ」


 

  ◆◇◆◇◆◇


 良介が連れて来られたのは、天井が崩れた部屋だった。天井の中心部分がぽっかりと空いて、太陽の光がスポットライトのように地面を照らしている。そのためか、部屋は百貨店の吹き抜けの様であり、季節は春先でまだ肌寒く感じる筈なのに、なんだかぽかぽかとした陽気が漂ってくる。

 しかし壁や床、それに少しだけ残った天井のコンクリートは剥げ、所々にスプレーで落書きをされたり、茶色く腐ったように酸化した部分が暖かい陽気を寒々としたものに変えている。

 隅の方にはがれきが山のように積まれ、埃や塵が部屋中に舞い全体的に退廃的な薄汚れた場所だった。

 でも何故か嫌な感じがしない。どこかにまだ人の温もりが残っているかの様にも感じる。そんな不思議な場所だった。


 その部屋には多種多様な人間が集まっていた。全身筋肉だるまのスキンヘッドの巨漢の男やクラブでママ等と呼ばれていそうな妙齢の女性、詰襟をきっちりと着こなしたおかっぱ頭の中学生にそれに寄り添うように立つ化粧の濃い金髪のキャバ嬢、恰幅の良すぎるマダムとグレーのスーツをだらしなく着崩したワイルドヘアーの三十路の男等、他にも何人かの濃ゆいメンバーが総勢二十人ほどその部屋で良介を待ち構えていた。


 そしてその中心に昨夜話をした川島大和かわしまやまとが立っていた。


「やあ、良介君。呼び出して悪かった。彼らを紹介したくてね」


 川島は両手を大きく広げて歓迎のポーズをした。


「改めて自己紹介を。僕らが超能力者保護組織(チーム)【スペムウルティマム】。ここにいる巨漢が荒事専門の戦闘班リーダーの斉藤俊雄さいとうとしお


 川島はすぐ後ろにいた巨漢の男を指さした。


「押忍!よろしくお願いしやす」


 言うや否やその巨漢を腰から折り曲げ礼をしてくる。

 川島に紹介された斉藤の声はイメージを裏切らないドスのきいた低いものだった。


「は、はい」


 良介は斉藤の雰囲気に気圧されたのかそれとも大の大人に頭を下げられているのにビビッているのか分からないが、若干びくついている。


「こちらのマダムは医療班リーダーの堀江梢ほりえこずえさん」


 次に川島が指さしたのは薄紅色の着物を着た妙齢の女性だった。濃紺の帯と着物のあちこちに広がる淡紅色の桜が落ち着いた雰囲気を作り上げている。


「よろしくお願いします」


 きれいにお辞儀をする姿も様になっており、上品な大人の女といった様相である。


「こ、こちらこそよろしくお願いします」


 あまりにも丁寧な物腰についつい見とれていた良介は不格好ながらも急いで礼をする。


「こっちのおかっぱ君が【スペムウルティマム】の頭脳(ブレイン)桐原賢治きりはらけんじ君。すぐ隣にいるのが保護者の桐原紗有里きりはらさゆりさん」


 続いて川島はこずえの隣にいた中学生くらいの少年と、その首に腕を回して寄り添っているキャバ嬢を指差した。


「……どうも」


「よろしくね」


 賢治は小さく会釈し、紗有里はひらひらと手を振った。


「よろしくお願いします」


 良介は無愛想だなと感じたが表情に出さないように礼をする。


「そちらの恰幅の良いマダムが情報班リーダーの上里一美うえさとかずみさん」


 今度は川島は奥の方にいた優に二メートルはあるのではないかと思われるほど大きな女性を指差した。


「よろしくね。坊や」 


 その女性を一言で説明するならば縦にも横にも大きな女性を言ったところか。それほどまでに上里一美は大きかった。


「はい」


 そのあまりにもビッグサイズな彼女に良介は返事を返すのが精いっぱいだった。


「そして。そこでグレーのスーツを着崩してるのが今日から君の訓練の監督をしてくれる飯島翔いいじまかける


 最後に川島はすぐ隣にどかっと座っている男を指差した。


「よお」


 飯島は気だるげに片手をあげ良介を見つめた。


「どうも」


 そのあまりにもぞんざいな対応に毒気を抜かれたのか、良介は小さく会釈を返した。

 


「そして僕が全体のリーダーの川島大和。よろしくね。良介君」


 最後に川島は自分の胸指差すとそう宣言した。






 

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