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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

"赤縄"

掲載日:2026/04/13

僕たちは、吸血鬼の邸宅に於いては「血織物」という呼び名で呼称されて居る



僕と君は心臓に釘を打たれ、長座の姿勢で標本の様に壁に並べられて居て

そこから真っ直ぐに伸びた、脚が在るべき場所には、僕たちの血管を編み合わせて造った敷物が廊下いっぱいに拡がって居る

通常の人間で在れば正気を保てるような身躰状態では無かったが、僕はこの暮らしを好きになり始めて居た


即ち、僕は君の事が好きだった



別室には、「少女二人の上半身の血管総てを編み合わせて造った敷物」も在るらしい

僕たちは其れと対になる『作品』たる、『少年の血織物』なのだと聞いた事が有る


僕は『上半身を遺して貰う事が出来て、本当に良かった』と毎日の様に思って居た


もし眼が喪われて居たら

傍らに座る君の頬を視る事は、絶対に出来なかったから



人間が生まれて死ぬほどの時間よりも多くの昔に、僕たちは吸血鬼と戦う存在だったのだという


覚えて居なかった


人としての僕たちの生は、取るに足らない長さしか無かったが、血織物になってからは永劫に近い程の時が流れたような気さえする


その歳月の間、絶えず僕たちは繋がって脈打ち続けた

感覚器官には常に互いの暖かさが在って、それはいつでも優しかった


僕はこの暮らしが好きだった





或る夜、邸宅が大火に視舞われた

逃げ回る足音がこだまして聞こえる中、僕たちは炎に照らされながら、静かにその身を炙られて居た


僕が泣くと

君は眼前の炎を視詰めながら、「歌おう」と言った


隣から、繋ぐ為の君の手が伸びる

僕はそれを、ぎゅっ、と胸に抱くと、君と二人で歌い始めた


息を吸い込むたびに喉は炎に焦がされ、灼け崩れた壁が繰り返し躰を強打したが、僕たちは歌い続けた

やがて、邸宅が崩壊する音が互いの歌う声を遮る程になったが、それでも僕は歌う事を止めなかったし、君もそうして居ると信じて居た



自分の躰が焼ける臭いがする


天井が砕け、頭上に降り注いだ

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