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追放された悪役令嬢、辺境で植物魔法に目覚める。銀狼領主の溺愛と精霊の加護で幸せスローライフ!〜真の聖女は私でした〜  作者: 黒崎隼人


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第7話「聖女の影、辺境に迫る」

 リリアが辺境で新たな居場所を見つけ、穏やかな日々を送っている頃、王都では一つの噂がまことしやかに囁かれ始めていた。


「北の辺境が、にわかに活気づいているらしい」


「追放されたあの悪役令嬢が、何か不思議な術を使っているとか……」


「魔物が棲む森が、今や豊かな土地に変わりつつあるそうだ」


 その噂は、王子の婚約者として玉座の隣に座る聖女セレーネの耳にも、もちろん届いていた。


「リリア……あのアマ、まだ生きていたのね」


 セレーネは優雅な微笑みの下で、ギリ、と奥歯を噛み締めた。


 追放すれば、辺境の厳しい自然の中で惨めに朽ち果てると思っていた。


 それなのに、土地を豊かにしている? 民に慕われている? 冗談ではない。


 リリアの存在そのものが、セレーネの苛立ちと嫉妬を掻き立てた。


 自分が手に入れた光り輝く場所。


 その影で、リリアが自分以外の誰かに認められ、幸せになっていることなど断じて許せなかった。


(あの女の力は、きっと邪悪なものに違いないわ。そうよ、獣人族を危険な魔術で惑わし、王国に反旗を翻すつもりなのよ!)


 そう結論付けたセレーネは、すぐに行動を起こした。


 彼女は婚約者であるユリウス王子の元へ向かうと、涙を浮かべ、いかにも憂いに満ちた表情で訴えた。


「ユリウス様……辺境の噂をご存知ですか? リリア様が、何か得体の知れない力で獣人族を支配し、土地を無理やり変えていると……。このままでは、獣人族が王国に牙を剥くやもしれません。私は、この国の未来が心配で……」


 ユリウスは、リリアを追放したあの日から、心のどこかに小さな棘が刺さったままだった。


 本当に、彼女はセレーネが言うような悪女だったのだろうか。


 自分の判断は、正しかったのだろうか。


 そんな迷いがある一方で、聖女であるセレーネの言葉を疑うこともできずにいた。


 彼女の言う通り、リリアが辺境で良からぬことを企んでいる可能性も否定できない。


「……わかった。真偽を確かめる必要があるな」


「はい。ユリウス様が自ら辺境を視察なされば、真実が明らかになるはずです。もちろん、わたくしも聖女としてお供し、邪な力があればそれを浄化するお手伝いをいたします」


 セレーネは完璧な提案に、内心でほくそ笑む。


 視察は建前。


 本当の目的は、リリアが築いたものを自らの目で確認し、そして、今度こそ完全に叩き潰すこと。


 ユリウスの目の前で、リリアの力を「邪悪な魔術」だと断罪し、社会的に抹殺する機会を伺うためだ。


 ユリウスはセレーネの言葉を信じ、複雑な思いを胸に抱えながら、辺境への視察団の派遣を決定した。


 その知らせ――王族が辺境を訪れるという公式の書状が、数日後、魔狼の森の領主、カイル・ファングクラウのもとへと届けられた。


 書状に記された視察団の代表者の名を見て、カイルの金色の瞳が鋭く眇められた。


 ユリウス・レオンハート王子。


 そして、聖女セレーネ・ホワイト。


 リリアを追放した張本人たちが、この地にやってくる。


 カイルの胸に、嵐の予感が渦巻いた。

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